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Dream Quest 本編63

「ほぅ、武器が出せたじゃねーか」
「蒼、それは嫌味で言ってるか?」
「なぜ嫌味など言わねばならない?」
「こんなもの、どうみても武器じゃないだろう!?」
「それが武器じゃない?だったらそれは何なんだ?」
「これは、ただのスリッパだよっ!」
「すりっぱって何だ?」
「蒼…ひょっとしてスリッパ知らないの?」
「ソレは知らないと何か問題があるほど凄いモノなのか?」
「いや、知らなくても何の問題もないけどね…」
俺はスリッパを握りしめて殆ど途方に暮れている感じだった。
(蒼は本当に知らないんだな…しかし、これから先俺の武器はスリッパです!って嫌すぎだろう…でもゲームのボスみたいな凄い敵がいたとして、ソイツがスリッパに倒されるってのは屈辱的でいいかも?いやいやいや、やっぱりラストシーンでスリッパを構える自分の姿なんて想像もしたくない…(汗))
とりあえず仕方が無いので俺は半分ヤケクソで、そのへんにいるゴキ共を片っぱしからスリッパで叩き消していった。
蒼が動いている様子は無いのにゴキ共の減りが早いような気がする。
(近くに誰かいるのか?)
直ぐ目の前で俺は触れてもいないのにゴキが2匹程ドサッと落ちて消えた。
(誰だろう?)
うっすらと暗がりから現れたのはサトコさんだった。
俺は手に持ったスリッパを思わず後ろに隠してしまった。
「おっ、ここにいたのはタツヤ君か、どんな感じ?かなり倒してるんじゃない?うまくいったのかな?」
「えっ、あの、その…」
俺は何ていえばいいのか言葉が見つからずにいた。
「タツヤは武器を作れたぞ」
(蒼、頼むから余計な事は言わないでくれ~)
「あら?結構早かったね?どんなのが出てきた?」
俺は恨めしそうな目で蒼を睨みながら後ろに隠した手を無言で前に出した。
「なかなかいい感覚してるんじゃない?」
サトコさんがソレを見て思ったほど驚きも笑いもしないのが不思議だった。
(本当は爆笑したいのに俺に気を使って笑いをこらえてるんだろか?
でも笑いたいのを我慢してる感じではないよな?)
「え~っと、コレのどこらへんが…?」
(俺は情けなくて涙が出そうなんですけど…)
「ん?自分の想像や希望というカッコイイだけの曖昧なモノより現実の記憶や体験で知ってる形が優先されるのは、ある程度は仕方が無い事よ?
でも一番重要なのはその場で最も適した形状だと思われるものを自分で作りだせる事だから、とりあえず上等だと思うけどね?」
「そんなものなんですかね…」
「タツヤ君と蒼君で、どっちが多くゴキブリを退治できるか競争したらタツヤ君が勝つんじゃない?
蒼君の刀は、ここで振りまわすには狭過ぎだし、刀は長さもあるので振り回すにはロスが大き過ぎるからね」
「そんな競争で勝っても…」
俺はスリッパを握りしめながら特別酷い結果だったわけでもなさそうな事に内心ホッとしていた。
「サトコさんの方は?」
俺の問いにサトコさんは長細い短剣のようなものを俺にチラっと見せてから顔を近づけてきて小声で言った。
「私は前にやってるから、この身体でも同じ事ができるようになりさえすればいいだけだったんだけどね。さっき待ってる間にも一人で中で練習してたしね」
そう言うと照れたように笑っていた。
(ああ、中に入って薄汚れてたってのは練習してたからか…)
「他の人の様子を見に行ってみようか?」
俺は、みんなにスリッパを披露するのには、かなりの抵抗があったが、他の人が普通に心配だったのは事実だ。
その時、蒼が真剣な顔で話しかけてきた。
「おいっ!」
俺とサトコさんは何事かと思い揃って蒼の方を見た。
「すりっぱってそんなに強いのか?」
俺は何て答えたらいいのかわからなくて頭を抱えて下を向き悩んだ…
サトコさんは後ろを向いてクックッと変な声をあげて肩を震わせていた。
どうも今回は笑いを、こらえきれなかったみたいだ。
「オマエら!何故肝心な事を言わないでいるんだ!?」
「蒼…何も言わないのじゃ無くて、肝心な事など何も無いから何も言えないんだって…(汗)」
(素直に履物だとか答えてやればよかったのだろうか?言えば言うほど蒼にはわけがわからなくなりそうだけどな?)
俺には蒼を納得させられる説明ができる気がしなかった。
サトコさんは振り返って
「今度、詳しいデーターを見せてあげるよ。覚えていたらだけどね!」
そう言いながら笑っていた。
きっとサトコさんは忘れる気満々のような気がする…

Dream Quest 本編62

「そろそろ集まってきたかな」
サトコさんがそう言うと目に前の暗がりの中に数え切れないほど無数に黄色い目らしきものが光っていた。
「なんか物凄い数いるような?」
「黄色い目の絨毯みたいだね~」
デッドは軽いと言うか、どこか天然が入ってるような気もするが、それでも怖いと言わないのは実は凄い奴なのかもしれない。
良く見ると長い触角がせわしなく上下左右へと動いている。
洞窟の奥が暗いと感じたのは間違いではないが、なによりソイツらの身体がやたら黒かった。
「そろそろ動くよ」
少女は、ほとんど言葉も出来ずに足をガクガクさせて後ずさりした。
次の瞬間ソレは一斉にあらゆる方向へ飛んだり走ったりしながらコチラに向かってきた。
「あわわ…ゴ、ゴキブリ!?」
「最初は逃げて避けて!頑張って追い詰められてね!あ、手で戦える人は手を使ってもいいけど手に頼らないでね」
「手で払うって言ったってコイツら便所の蓋ぐらい大きいですよ~(汗)」
「それでも外の奴よりは全然小さいでしょ?でも数は半端無いからエサにならないように気を付けてね(笑)」
「きゃああ」
少女の叫び声に思わず身体が反応して走り出しそうになる。
「アテナさん大丈夫?」
みんなバラバラに逃げ回ってアッチコッチに散ってしまったようで、そこそこ大きな声を
出さないと聞こえなさそうな距離ほど離れてしまっただろうか。
「はいっ、なんとか大丈夫ですっ」
大丈夫じゃないと返事されても俺に助けに行く余裕はなかった。
ゴキ共は払っても避けても走っても、ただどんどん数が増えていくように感じた。
このままコイツらに埋め尽くされて周りが黒一色の闇に閉ざされるような気さえしてくる。
俺はコイツらに喰い尽されて白骨になって転がってる自分の姿を想像して思わずゾッとした。
その時、何か大きくて柔らかいものにぶつかった。
その感触は、おそらく人と当たったものだと思えた俺は、なんとなくホッとして横を向きソレに目をやった。
「蒼?オマエこんな所でなにしてるんだ?」
「何もやる事が無くて困っている…」
そう言って突っ立っている蒼の身体にも頭にもゴキブリが張り付いているが蒼はソレを振り払う事さえせずにじっとしていた。
「蒼、ちょっと武器出して見せてくれない?」
俺は絡みついてくるゴキ共を手で払いのけながら言ってみた。
蒼は黙って俺の前に手を出して、まるでそこに武器があるかのように空中を掴んで手を軽く握ってみせた。
次の瞬間…ソレは元からそこにあって、ただ見えていなかっただけのように姿を現したのだった。
俺は顔などにも容赦なく飛びかかってくるゴキ共を腕を大きく振って一気に払いのけた。
とりあえず、まとわりついていた奴らを全部払った次の瞬間、俺は蒼の真似をして手で
何かを握る動作をしてみた。
一瞬、何かを本当に掴んでいるような感触があった気がした。
(今、何か手の中に感触が?)
それを直ぐに思いだそうとしたけれど、ゴキ共は俺が思いだすのを悠長に待っててはくれなかった。
(くそ、もうちょっとだったのに…コイツらめ…(怒))
俺は上半身に張り付いてくる奴らを腕で払いのけたら、顔の方に向かって飛んできた奴を手に渾身の力を込めてたたき落とした。
ソイツは俺の手に当たる前に思いっきり地面に叩きつけられて消えていった…
俺は何かを確かに握っている感触があった。
俺は恐る恐る手に掴んでるモノを見てみた。
(こ、これは…)
蒼も全身にゴキブリを貼り付けたまま俺の手の中のモノを覗いてきた。

Dream Quest 本編61

(え?なんだ?クエストで武器を貰って…それは武器で指輪で?元に戻したい?)
「彼女は既に武器を持ってる事を“知っている”し、彼女は元の武器の形も“知っている”から、後は彼女次第で元の形に戻せるって事だよね~?
だって彼女自身がはっきり自分でそう言ってるんだしさ。
でも僕達は元々武器など持ってないよね?サトコもタツヤも僕には見えない別の形で持ってるの?」
デッドは、それなりにサトコさんの話を理解しているようだった。
「うん、そうそう!言葉でサラっと言っちゃうと、どうってことない話に聞こえるけど自覚とか認識って結構重要なのよ!後…私達は武器を持っていないのではなくて今は無形という形をしているだけね。
そして手にする武器の形は私達が自分で決めなければならないのよ」
「僕だけが武器を持ってないんじゃないんだね、あ~よかった~」
デッドは変なとこで納得していた。
俺も何となくはわかるような気がしたが、かなりあやしい感じだった。
(無形というかたち???)
「とりあえず、みんな武器は持ってるっていうか、何かすれば出して使えるようになるという事ですね?
で、具体的にどうやって武器を出す?現す?んです?」
俺は手を表裏とひっくり返しながら見ていた。
「だから、そこで念じるんですよ?ねっ?」
少女は真面目な顔で俺を見つめるように答えたが俺にはサトコさんが、みんなで並んで念仏大会をしようとかいう非科学的な事は考えてないだろうと思っていた。
「経験も危機感も無い者がちょっと念じたぐらいでは、そううまくは行かないわ。
だからね、どうしようもなく、そうしなければならない必要に駆られる環境に身を置く必要があるのよ!」
サトコさんは自信満々のように何だか凛々しく説明している。
「必要に駆られる?実践戦闘って事かな?」
「へぇ、僕そういうの初めてだよ~」
「私、がんばります!」
サトコさんは、いつものちょっと怖い笑顔をしてから本格的な説明に入った。
「今から私達は洞窟に入るの!そこには草原より小型だけど数がとても多くて動きも素早い生き物がいるわ。
そこでは逃げても避けても、きりが無くて戦うしかないと追い込まれるはずなの!
その状況をどうにかするには武器が必要なんだと自分に嫌と言うほどわからせるのよ!
いい?誰かが叫んでても逃げ回ってても、絶対に助けに入ってはだめよ?
助けなど来ないので自分でどうにかしないと!という危機感も時には必要だからね。
まぁ自分の事で手一杯で人を助けてる余裕は無いと思うけどね。
ただし運よく武器が出せた人は他の人を助けてもいいかもね。
人が出せた武器を見たら自分にも可能だっていう自信と、まだ手にしてない焦りとが加わって、いい効果が得られるかも知れないしね。
ガイドのいる人はガイドに助けも手出しもするなと命令しておいてね!ここに置いて行ってもいいわ。
ドラゴンちゃんは、ちょっと洞窟は狭くて無理だろうし、中で火でも吹かれたら大変だからお留守番ね。
それじゃあいいかな?質問は無いわね?いくわよ?」
俺は蒼に絶対何もするなと命じた。
少女は自分のガイドに外で待ってるように言ったようだ。
「サトコ~この中には何が居るの?」
「入ってからのお楽しみ!」
サトコさんは悪戯にニコニコしていて、ちょっと…いや、かなり不気味だった。
俺達は洞窟の中に入った。
かなり暗くて灯りなどもないが不思議と歩けないほど暗いわけでもなかった。
その時、カサカサと嫌な音がした。
(また虫か?)

Dream Quest 本編60

「あのっ、これやっと材料がそろって…その、お店で交換してもらったんですけど!
どうすればいいのか全然わからなくて…」
「どうすれば?」
「どうにかするものなのか?」
「素敵だと思うけど~?」
「はい、これ武器!のはずなのですけど…」
そう言いながら少女は指輪を眺めている。
「へぇ…武器ってそんなだったんだ?」
(サトコさんっ?それも初めて見たとかいうオチですか!?(汗))
「魔法でも使えるのかなぁ~」
(あ、そういうのもアリか…)
「武器なのか?」
(メリケンサックみたいに使うのかな?まさかね…)
「槍のはずなんですけど…」
「それが槍?」
(変化するという事か?)
「どうみても僕には指輪にみえるけどな~」
(誰が見ても指輪にしか見えないだろっ!)
「念じてみればいいんじゃない?」
(おお!なるほど!さすがサトコさん)
「お店の人も、念じろって…でも、何も起きないというか…よくわからないというか…」
少女は下を向き少し涙目になっていた。
「まぁ、本来念じさえすれば何でも出て来るような生活をしてないからね…
どのぐらいとか、どうやってとか、分からない方が普通でしょ?
だから私達は今日この中で戦闘訓練と武器作成をマスターしようと思ってるの!
念じなければいけないのは同じだから今日だけ一緒にやってみる?」
そう言うとサトコさんは、洞窟を指さして見せた。
「いいんですか?」
少女は嬉しそうに顔を上げた。
俺は、まだ何も聞いていなかったのもあり意味がよくわかっていなかった。
「サトコさん、武器作成って…洞窟で材料でも掘るんですか?」
「え?そんな事するつもりなら、まずツルハシを念力で出さないといけなくなるわよ?
私達も念じて武器を出せるようにならないと、この先ずっと素手じゃ大変でしょ?
タツヤ君も武器欲しがってたしね?」
「えええっ?そりゃ欲しいですけど、かなりの訓練が必要って言ってませんでした?」
「んまぁ…訓練と言うより、要はやり方?とコツなのよっ!」
「念じて武器とか、なんか楽しそうだよね~?」
「そうですよね」
デッドと少女は顔を見合わせてニコニコしている。
「やり方とコツ?」
「まず、私達は普段の現実で何かあれば直ぐに武器を取って戦わなくてはいけない!という常識も習慣も考えも無いでしょ?この世界では何でも瞬時に手に入れる事ができるけど実際は何でも!ではなくて、良く知ってる事と強くイメージ出来る事が重要なのよ。
後は習慣や日頃の考え方にも左右されるかな…
内戦や戦争で戦地になっているような場所に住んでいる人なら常に武器を近くに置いて、何か物音が聞こえたら直ぐに武器を手に取り身を隠すのが普段の日常になるほどの経験と体験を持ってるけど、私達はそれを傍観したことぐらいの経験しか無い。
だから今の私達には武器で戦わなくはいけない!という強いイメージも無く具体的に、どんなものを、どう使って、どんな風に戦うかの経験がろくにない。
だから私達は実際に何かと戦って、戦うためには武器が必要なんだって事を自分自身に身を持ってわからせてやる必要があるの!
彼女が貰ったという武器は、これは武器なのだという記憶が焼きつけられた状態ね。
今の彼女にはどうやって使うのかがわかってないけど、それが武器だと言う事は自分でも言ってるし、疑ってもいないでしょ?
ねぇアテナさん?あなたは、それが武器の形をしてた時も見てるのよね?」
「あ、はい…飾ってあった時は凄く綺麗な槍でした。
だから、それを見てどうしても欲しくなって…クエストを受けて、ずっと材料を集めてたんです!でも、お店の人が持ってきて目の前に置かれた途端、指輪に変わってしまって…とりあえず指にはめてみたのですけど、どうすれば元の形に戻せるのか全然わからなくて…」
「それで元の形に戻したいのよね!?ね?今のでわかるでしょ?」
サトコさんは悪戯っぽく俺に聞いてきた。
「えっ?わかる?何がだろう…?(汗)」
俺がそう答えるとサトコさんはガックリしていた。

Dream Quest 本編59

「サトコは、タツヤをずっと待ってたんだよ?
サトコは一人だから、タツヤを探すのはとっても大変なんだし、女の子を一人で長く待たせておいて平気でいるのって何様だよ~?
僕だって人を探せる能力なんて無いからさ~今日サトコを探すの物凄く苦労したんだよ?
最初グレイにサトコの所に飛んでって言ったら、何の事だか分からないみたいでさ~
仕方ないから、ずっと空から探してたんだよ~それで、やっと見つけて…さっきグレイにサトコを会わせてさ、この人を覚えてねって言ったんだ。
グレイがわかってくれたかどうか僕にはわからないけどさ、何もしないよりはいいでしょ?
あ、グレイ!ついでにタツヤ達も覚えておいてほしいなっ!」
「えっ?デッド君、私は別に待っているわけじゃないわよ?」
「サトコ~そいつばっかりじゃなく僕の心配も少しはしてほしいな~」
(サトコさんは、いつも待ってる?そういえば俺も、いつだってサトコさんが先に来てるもの!と思い込んでいたよな?
ひょっとしてサトコさんは俺達を探知できないのか?
どうでもいいけど…オマエが今日サトコさんを探すのが大変だったのは俺のせいじゃないだろう?(汗))
俺は、他人がみんな自分と同じだと思ってたわけではなかったが、それぞれに違うという当たり前の事を忘れそうにはなる…
何がどう違うのかは見てるだけでは解らない事も多いものだ。
それでもデットの前でサトコさんに、アレコレ確認するわけにもいかず、俺は頭の中でアレコレ考えを巡らせていたので、その場は黙り込んでしまっていた。
(聞いておく事は全部聞いたつもりだったけど、なんか後から後から良く考えるとどうなの?って事が出てくるよな…前なら、その場ですぐ聞けたのに今は無理だし…早いうちに店にでも行って少し話をした方がいいのかもな…
行く時はやっぱ手土産の一つでも持って行くべきなんだろうか?
いや…俺って一応お客なんだよな?え?俺は店に行くのか?家に行けばいいのか?
どっちに行けばいいだろう…あ、店が営業中だったら家に行っても仕方ないか…
いや…家も店も同じ建物だし…?)
俺の頭の中は、もし誰かが聞いていたら、そんな事どうでもいいだろう!?と突っ込まれそうな事に話が大きくズレていたが、突っ込む人が居ないおかげで俺は、どうでもいい事をアレコレ考え続ける事ができてしまっていた。
その時、聞いた事のある声がした。
「あ~やっと見つけた」
そう言いながら息を切らせて女の子が約2名、俺達の方へ走ってきた。
どうやら昨日の女の子だ。
「もし見つけられなかったらどうしょうかと…」
(えっ?なんで?)
俺は無言で即答していた。
「どうしたの?」
サトコさんは、岩の上で座ったまま身を乗り出して問いかけていた。
デッドは、なんだ?という感じの顔で彼女達を見ていた。
「あのっ、昨日は有難うございました。あのっ、それと…」
そう言うと彼女は俺達の方に手を出して中指にはめられていて大きな宝石がついている指輪を見せようとしているようだった。
「指輪がどうかしたの?」
「指輪?」
「凄い宝石だね~」
俺達は口々に思った事を言葉にしたのだと思う。

Dream Quest 本編58

「あっ、そうだこれさ…」
そう言うと俺は端末に画面にズラリと並んでいる多くの服を蒼に見せながら続けた。
「なぁ…もう少しマトモな服はないのか?(汗)」
「俺様に現実の服の流行とか言われてもわからんぞ?」
「こっちの服が非現実的過ぎるんだよっ!」
(こんなの仮装大会かコスプレ大会にしかならねーよ!)
「こんな所でしか着れないからいいんじゃないのか?」
「それは、そうかもしれないけどさぁ…」
俺は、戦闘に備えて動きやすい服が欲しかっただけなのだが、ここに並んでるのは、騎士の服とか、貴族の服とか、なんか派手でピラピラしてて動きにくそうなものばかりなのだ。
(この忍者服とか言うのは動きやすそうだけど、どう見ても着たら凄く浮きそうで俺には、
とても着る勇気はないな…しかもこれはなんだ?男物だよな?マリーアントワネットの
ドレスセット?とか…コレ着てる男がいたら怖いぞ…でもちょっと見てみたい気も…)
仕方が無いので俺は今回は着替えを諦めた。
「俺、昨日なんか途中から覚えてないような気がするんだが…もしかして記憶消しちゃった後だったりしないよな?」
「自分で寝てしまって覚えてないだけだ!俺様のせいにするな!」
「え…あ、ごめん…ところで今日も昨日の場所に行くの?」
「そうらしい…ただタツヤがアイツと離れて別の場所に行きたいとかあれば、俺様はそれでも構わんが?」
「個人的に行きたい場所なんかないよ?そろそろ出発しようか?」
蒼は特に返事をするわけでも無く扉に向かって手をかざした。
そして直ぐに俺の方に振り返って「行くぞ」と言った。
俺は無言でうなずいて扉に向かい蒼の背をポンと軽く叩いて二人で扉に入った。
目の前が明るくなって、俺はすぐ辺りを見渡して蒼に話しかけていた。
「この岩のごつごつした感じ…ノミと戦った所ぐらい?」
「その辺りのはずだ」
「ここって、草原っていう感じと少し違うよね?なんか大きな岩が多いし…」
「この辺りは草原の隅の方で近所には岩山と洞窟がある。大きな岩が多いのは岩山があるせいだろう」
「へぇっそうなんだ…ところでサトコさんはいる?」
「洞窟の手前あたりにいるな」
「そっか、じゃあ行こう」
俺達は洞窟の方とやらに走って行った。
この辺りは草もまばらで人が隠れられるほどの大きな岩はゴロゴロしているが土に埋まってるようなのも多く視界はそんなに悪くは無い。
洞窟らしき小さな岩山が見えてその手前の低い岩の上に腰掛けているサトコさんとデッドとドラゴンがいた。
(げっ!あのやろう…既に一緒にいるのかよ…)
俺は一瞬、むむっとなったが、まぁ一緒に行動する事になったんだから、いつ居てもおかしくはないのだ。
「サトコさん!」
俺は名を呼びながら挨拶のようなつもりで軽く手を肩のあたりまで上げた。
それに向かってサトコさんも笑いながら同じように手を上げた。
デッドは無言でニコリともしないで同じように手だけ上げていた。
ドラゴンは首を曲げて俺達の方を見た。
俺は一瞬、動きを止めて身構えてしまった…
(ま、まぁ…いきなりこっち向いて炎吐いたりはしないよな?)
俺は、なんとなく全身薄汚れてホコリっぽいサトコさんが気になった。
「ところでサトコさん…いきなりですけど微妙に薄汚れてません?」
「ん?ああ、これね…さっきまで中にいたから…あはは」
そう言いながらサトコさんは洞くつを指さしながら笑っていた。
「中に?洞窟の?」
「まぁね、たとえ申し合わせて同じ時間に寝てたとしても睡眠のリズムやサイクルは個人差があるから、ぴったり同じ時に会えるわけではないので待ち時間とかあったりはするから、その時間潰しにちょっと中で戦闘訓練をね(笑)」
「そっか、待ってる間何もしないでいるのは何か勿体ないですもんね」
俺が何気なくそう答えるとデッドが身を乗り出して俺につっかかってきた。

Dream Quest 本編57

11.jpg
ピッピ、ピッピ、ピッピ
目ざまし時計の鳴り響く音が聞こえる。
ピピピピピピ・・・ピッ!
俺は手を伸ばして目ざましを止める。
(あ~もううるさい…はっ!今日からまた仕事だっ!)
俺はベッドからガバっと起きて、いそいそと仕事へ行く準備をする。
準備と言っても別に背広やスーツを着て行くような仕事では無いので、さほど時間はかからない。
髪も思いっきり寝ぐせです!と見るからに主張している奴がいなければ、とりあえず全体にブラシが通ったらそれでよし!であるし見た目なんて外で、こっそり指を刺されて影で失笑されるような事さえなければいいのだ。
「こんなもんかな」
洗面所の鏡に映る顔や服に、おかしい場所が無いか一通りチェックしたら、後は部屋に戻りカバンを掴んで出掛けるだけだ。
さて、とりあえず、バリバリ働いて、さっさと終えて、さっさと帰って、さっさと飯食って、さっさと寝たら今日も元気に出発だな!
(あ~なんか家帰って寝るのが楽しみになってきたかも)

俺は、今までの夜更かし癖は何だったんだ?というほど、やたらと早く寝るようになっていた。
そして俺は既に夢の中の自室にいる。
しかし相変わらず変な言葉で最初のマニュアル通りの読み上げを復唱する蒼に、いい加減イラッとしてしまったのは言うまでも無い…
「蒼、いい加減そのマニュアル?消すか変更するというのは出来ないの?」
俺は端末を触りながら蒼に尋ねた。
「自分が夢を見始めたという自覚が毎回々必ずあるとは限らんのだからな?」
「寝る前に機械装着して、わざわざここに来るんだから嫌でも思いだすだろ?」
「適当に楽しい夢を毎日色々と見れたらいい程度の奴なら夢への思い入れが少ないので肝心な事ほど忘れやすいものだ」
「ふーん、そういうもん?しっかしサトコさん、色々触って内容を変更したなら、こういう面倒臭い仕様を全部消してくれればよかったのにな~ブツブツ」
「それほど言うなら消してやろうか?それでもし忘れたりしたら…ご丁寧な案内は出来ないので、ぶん殴って思いださせる事になるからな?」
「えっ…ああ、うん…あの無意味なご案内をダラダラ聞くよりも殴られてパッと思い出す方がまだいいな…あっ、そうだサトコさんさ、ここのクローゼットから服だして着替えたんだよね?
で…クローゼットって何処よ?(汗)」
「そこの端末の、お部屋のインテリアと機能というのに今使えるものが出て来る!
そんな事よりモニターへの最新情報とかチェックしとけよ!」
「えっ?情報は蒼がもらってきてるんだろ?」
(おっ!服はこれか?)
「モニターへの情報とガイドへの情報は別物だ!特に昨日の事件に関して何か出ているか?」
「えっと、モニターの皆さまへ…を見ればいいのか?
なになに…中世ヨーロッパに建てられた本物のお城を再現したエリアが出来ました。
メイドや執事など本格的な使用人も大勢揃って城主様をお待ちして…
これは違うな…(汗)
お、これかな?モニターの皆さまへの注意事項と新サービス(重要)
ショップと出会いの広場以外のエリアは、わが社の占有スペースではない事を最初にご説明させて頂きましたが、占有スペースではないという事は外部から侵入する事が可能なエリアという事です。
外部からの来訪者は必ずしも良識や常識を持っているとは限りませんのでガイドを連れていない見知らぬ人物が居る場合は出来る限り接触しようと思わずに、その場から速やかに離れる事をお薦めします。
もしモニター様の独断で外部者と接触した結果、何か問題が起きたとしても当社は対応し兼ねますのでご了承ください。
なお、他者との接触で酷く気分を害されたなどがあれば、その時の夢の記憶を消去するサービスを開始しましたので必要な場合はガイドの方へお申し付けください。またガイドの状態チェックサービスも始めましたので、ガイドが正常に機能しているか知りたい方は広場エリアのホスピタルへお越しください。…だってさ?」
「そうか…」
「そうかって、蒼の方はどんな内容なんだよ?」
「好戦的な部外者と遭遇して戦闘などになった場合、その日のその出来事に関するモニターの記憶を抹消せよ!」
「なんだよそれ!?」
「普通は夢を忘れてしまう事より夢をずっと覚えてる事の方が遥かに珍しい事なのだからな…故意に消してしまっても特に問題は無いといえる」
(なんだよそれ…それが最良の方法?だれも嫌な思いをしなかった事になるから?
襲われる度に忘れさせられるのか?…それって馬鹿みたいじゃね?)
「俺が例の奴に襲われたら蒼は俺の記憶を消すのか?それは社からの命令プログラムか何かで実行されるのか?」
「俺様には社からの命令も足枷も何も無い。とりあえずはアイツがその権限や制限を全部外してくれたおかげでな?記憶はタツヤが消してほしいと望むなら、いつでも消してやれるが?」
俺は何故だかムキになっていた。
「いいか!俺が苦しんでようが、泣き叫んでようが、何だろうが…無断で記憶を消すのは絶対に許さない!
俺が寝て覚めたら、すっかり夢の事など忘れていたとしてもだ!」
「了解したぜ、ご主人様(笑)」
「な、なんだよそれ」
俺は自分で言っておきながら、あっさり承諾してニヤッと笑う蒼を見た途端、少し恥ずかしい気持ちになっていた。

Dream Qest 本編番外

残った3人編

デッドが残っている蒼に話しかけた。
「あれ、君彼と一緒に帰るんじゃなかったの?」
「アイツが帰った後で、ソイツに何かあると、アイツが責任を感じるんでな…俺様はソイツが帰るのを見届けるだけだ!」
蒼はサトコを指さしながらデッドに答えていた。
「サトコは僕が無事に帰すから君は帰ってもいいよ~?」
デッドは蒼が残ってる事が不満のようであった。
「デッド君も、もう寝た方がいいわ」
サトコはデッドに微笑みながら言った。
「え~サトコが、こいつと二人っきりになるのは心配だよ~」
デッドには、いまいち蒼の事もよくわかっていなかったし、サトコの本体の事も知らないので、そのような発想をするのも自然と言えば自然ではあったのだが…
「それは絶対に大丈夫だから!馬鹿な事言わないのっ!」
「テメーと二人よりは何億倍も安全だ、馬鹿め!」
蒼とサトコは声を揃えてデッドに激しく言い切ったのだった。
「そんな…二人して馬鹿馬鹿言わなくてもいいじゃないか~わかったよ、僕はもう行くよ
サトコ明日もここにいるの?」
「うん、そうね、まだ少しやりたい事があるから明日もこのあたりに居ると思うわ」
サトコは営業スマイルのような笑顔で答えた。
「そう、じゃあまた明日ね~」
そういうとデッドは力なく手を振った。
「デッド君、おやすみなさい」
サトコもニッコリ笑って小さく手を振り返した。
振り返りながらそれを見ていたデッドは、何故かサトコの前まで急いで戻ってきた。
「お、おやすみなさい、また明日ね!絶対だからね!おやすみっ」
ずっと一人だったデッドには、そんな些細な会話のやりとりが嬉しくて仕方がなかったのだろう。
サトコと蒼はドラゴンで飛び去るデッドを見送っていた。
サトコ、肘を曲げて小さく手を振っていたポーズのままで固まっていた。
「アイツに、私の本体はただのおっさんです!って教えてやればいいんじゃないのか?」
「私はまだ20台です!おっさんじゃありませんよ!?」
「詐欺師め…」
「タツヤ君の体調はどうです?」
「呼吸、脈拍、脳波、異常は無いな」
「ならよかった…」
「今日は、体置いて行くなよ?」
「わざわざ置いて行こうと思ってるわけではないんですけどね」
「それであのドラゴンの奴なんだが…って、オイ聞いてるのか?」
「オイっ!!って…またかよ…」
蒼はサトコの体を抱えて何処かに消えていった。

Dream Quest 本編56

「あ、でも、ここには警察みたいな人?いるみたいだよ?
個人のもめ事に出て来てくれるかどうかはわかんないけど何処かの国が戦争がどうのと言ってたのもあるし、なんか物凄い組織みたいなのもいるようだし~あれは、そいつらを捕まえる人達なのかな~?」
デッドは、とっても凄い話をサラリと話しはじめた。
「それはどういう事?」
サトコさんは、身を乗り出して尋ねた。
「えっ、たまに途切れ途切れに聞こえてきてた話しってだけだから詳しい事はよくわかんないよ?
ここで戦争の兵を作るんだとか、誰か偉い人をどうにかするとか実際に手を下さずとも
国が取れるんだとか?その実験をしてるとか?そういうのを阻止するために色々調べてる警察みたいな組織の人らしいのがいるようだとか、あと、なんだっけ?
有名な古代文明の名前みたいなのそれを復活させるとか?そういうの色々あるみたいだよ?
あ、そんなところにノコノコ飛んで行って捕まったり何かされたら嫌なので僕は見に行ったりした事はないから、どんな人とかはわからないからね~?」
相変わらず、軽いと言うか凄い話なのに凄そうに話さないデッドを俺はなんか不思議に思ったので聞いてみた。
「デッド!君はそういうのを多く聞いているにも関わらず、なんかやけに落ち付いてると言うか怖がってないと言うか…それがなんか不思議なんだけど?」
「え?僕だって最初に聞いた時は、なにこれ!?って思ったさ~
でも、良く考えたらさ~現実だって今実際に何処かで常に戦争してるんだし、偉い奴は欲の塊みたいな悪い事を裏でコソコソやってるらしいしマフィアとかわけのわからない組織とかも映画だけの作り物じゃ無く実在してるわけだし、僕達が知らないだけでさ、裏側には、もっと凄い事や凄い人きっとうじゃうじゃしてるんだよ~
そのぐらいタツヤも知ってるでしょ?でも、それ知ってて毎日怖がって生きてきた?
関わりさえ無ければ誰も何とも思わないのが普通じゃないの?
この世界も、そういう奴らに既に汚染されてるんだなってのを知った時は本当にショックだったよ?
でもさ~現実でも、それをどうにかしようなんて思わずに他人事で知らん顔してても割と平凡に楽しく生きていけるでしょ?
他所の国はどうかわかんないけど僕達の生まれた国ではそうだよね?
ここだって変わらないと思うよ~?第一僕なんかには考えた所でどうしようもない事じゃない?
タツヤは、この世界で、そいつらをやっつけるヒーローにでもなる予定なのかい?」
「いや、そういうわけじゃないけど…」
俺はデッドに対して何か微妙な違和感を感じていた。
(コイツ、話が軽いっていうのとは少し違う?なんなんだろう?言ってる事は、その通り!という事ばかりなんだが…なんか引っ掛かる…達観してる?それも違う気がするな…悟ってる?それとも少し違う気がする…単なる時代の差というのでもないだろう?あ~もう、なんだろうな…この感じ)
俺は、思い出しそうで思い出せない言葉のように、なにかモヤモヤしたものを感じていた。
サトコさんは険しい顔をして何かを考え込んでいるようだった。
デッドは何を思ったのかサトコさんの顔を覗き込んで囁くように話し始めた。
「サトコ、そんなに心配しなくても…他所の国が裏で何かろくでもないことやってるんだな~ってだけだよ~?
そんなのリアルでも普通に、いっぱいいある事だし、気にしてたらきりが無いよ~?
ここでは楽しくなるような事考えようよ~?僕が楽しい所連れて行ってあげようか?」
慰めてるつもりなのか励ましてるつもりなのかデッドは楽しそうに?話しをしていた。
「そうね…」
そう言いながら、口元が笑ってても目が笑っていないサトコさんを見て俺は、ふと最初の日の事を思い出していた。
(「とてつもなくデカイ危険があるとわかれば、その時は即座に撤退するのが賢明だろう…」
サトコさんはどう思ってるんだろうな…)
国同士がどうのとか国の偉い奴がどうのとか…とんでもなく権力のある裏組織とか、その存在を知った所で俺達にどうにかできる話では無い事は俺もサトコさんも、わかっている事だった。
それでも現実でだって、そんなものに遭遇した事は無く、この世界でも、それを見た事も無く、何の実感も危機感も湧いてこないというのが今の感覚だった。
(別にそういうのを敵に回すと決まったわけでも無い…そういう輩には邪魔しないので勝手にやっててくれ~で無視すりゃいいんだろうか?
まだ始まったばかりなのに俺達の、この先ってどこに…あれ、なんか頭がふらふらするような…なんか頭が重いような、少し物が二重にみえる…)
「オイっ!タツヤがノンレムに移行する!限界だ、俺らは帰るからな!」
遠くで蒼の声が聞こえてたような気がしたが俺は、もうわからなくなっていた。

Dream Quest 本編55

(とりあえず、予定通りという感じかな…しかし歳相応の反応と言うか意外と可愛いと言うか、なんとなく可哀そうと言うか(苦笑)まぁ、そういう青春もいいんじゃないかな?うん…たぶん…アイツ…きっと今日は手を洗わないんじゃないだろうか(苦笑))
蒼は何故かいつも俺達から数歩離れた所で黙って見ている事が多かった。
(ああういのは、やっぱ一匹狼の習性というやつなのかな…?)
俺は数歩横歩きして蒼の横に行った。
「俺達もご挨拶に行くか?」
「…。」
蒼は返事をしなかったが、とりあえず二人のいる所まで近づいて行った。
俺達に気がついたデッドは俺達を見てニコっと笑って
「よろしくねっ」と明るく言ってきた。
「ああ、まぁよろしくになるのかな」
「…。」
俺は多少無愛想に返事をしたが蒼は何も言わなかった。
(まぁ蒼はサトコさんに対してもツンケンする事多いしな…)
「しかし今日は、色々とあったわね~」
そう言いながら腕を挙げて伸びをしてるサトコさんに俺は、さっきの事を聞いてみた。
「サトコさんは襲った奴とかガーディアンとか知ってるの?」
サトコさんは俺を見て伸ばしてた手を下ろしてキリっとした顔で答えた。
「この世界は、私達が思ってる程未開の秘境なんかじゃなくて、海外からも国内からも、
多くの企業や組織が来てて色々やってるみたいなのだけど、そのうちの1つに怪しいゲーム会社があってね…そこが今やってるのがナイトメアハンターと呼ばれるゲーム感覚の夢冒険で、ガーディアンという戦闘にに特化したガイドのようなパートナーを連れて魔物退治という名目の戦闘を楽しんでる?ようなの…そこでは人やガーディアンのLV制というのが適応されてて、ランキングみたいなものもあり、強くなったらガーディアン同士を
戦わせて強さを競うみたいなものあるみたいだけど、その中の馬鹿の一人が、そんな戦闘にも飽き足らなくなって無差別に戦闘を仕掛けて来ているというところでしょうね」
そう言うと、サトコさんは呆れたように溜息をついた。
「別の所からの客って事?でも、ガイドはシステム上危険回避、安全第一?を考えて
作られてるんだったよね?なのに何故さっきみたいに…」
「ガイドは、戦闘用ではないの…それは戦闘用として作られてはいないと言う事だってのは、知ってるよね?
ガイド同士戦う事も無いし人を襲ったりもしない。
ここの環境だけ考えたら能力的には問題は無いはずだった…
でも最大の誤算は戦いを目的としたゲームと称して戦闘兵器のようなものを作り、それを客に売って遊ばせている企業がいたと言う事…
当然、こちらは戦闘は好みませんとか、平和主義ですとか、企業間の考え方の違いを掲げて見た所で相手方にとっては知った事じゃない!ってなものだし、この世界のあらゆる場所は何処の国の領土でもなく誰の領地でも無く、どこかが自治をしたり治安維持活動を
しているわけでもないから、何の法も規制もない世界なのね…
当然、警察組織みたいなものも無いし、勝手にそういう組織を作ったとしても、法がない以上取り締まるわけにもいかないわけで企業として何らかの手を打つにしても簡単にはいかないでしょうね…」
サトコさんは、そういうと空を見上げた。
俺は企業がらみの事はよくわからないので身近な発想しか思い浮かばなかった。
「ガイドの能力を強化したらいいのでは?」
「そのぐらいは、してくれると有難いんだけどねぇ…」
サトコさんの視線は空から地面に向かい足もとの草を軽く何度も蹴っていた。
「サトコって、なんかすっごく内部事情とかに詳しいよね~?ひょっとして何処かの会社の関係者の人だったりするの~?」
デッドが、またしても核心に触れて来るような事をあっさりと聞いてきた。
デッド自身は疑いや探りを入れるようなつもりは全くなくて、きっと本当に普通に話を聞いていた結果の素朴な疑問と感想という程度なのだろうが、俺達にとっては鋭いツッコミ以外のなにものでもないものだった。
サトコさんは目を見開いて、いつもより手をせわしなく動かしながら話しはじめた。
「わ、私は、し、親類に、こういう事を手掛けている社員の人がいてね…それでモニターやったり、利用者側の意見とかを聞かれたり、たまには職場に遊びに行ったりもして…
たまに手伝いもしたりして…それで色々と詳しくなっちゃったかなぁ…?あはは」
(サトコさん、うろたえすぎです…(汗))
「へぇ~そうなんだ~知り合いにそういう人がいるって何か羨ましいな…」
デッドは、サトコさんの適当な苦しい作り話にあっさり納得したようだ。

Dream Quest 本編54

「と、とにかくっ!お姉さんはやめてくれない?!」
(こういう場合、何故そうなのかとか普段のサトコさんなら、説明でもし始めそうだけど
さすがに、それはできないよなぁ…あはは(汗))
「じゃあなんて呼べばいいの?」
そう聞く青年に、サトコさんはバスガイドの観光案内のような手振りで俺達の名を言った
「私はサトコ、こちらはタツヤ君、あっちが蒼君よ」
青年は、それぞれに顔を向けながら復唱するように名前を呼んだ。
「あなたがサトコ、えっとタツヤ君と蒼君?僕はデッドだよ~あのさ、サトコのボディーガード?はどっちの人なの?」
(え…素直なのはいいけど、ひょっとしてサトコさん呼び捨てなの?それに俺はサトコさんのガイド扱いなのかよ…)
「デッド君ね?ボディーガード?ガイドの事かしら?私は…」
サトコさんは、一瞬言葉に詰まっていた。
サトコさん自体が人とガイドを混ぜたような人造人間みたいなものなわけだし、色んな意味で偽造なわけで、人であるふりをして誰かを欺き続けるとかってきっと平気では無いと思う。
途中で変にボロが出なければいいと俺は祈るような気持ちでサトコさんを見ていた。
「私のガイドは…死んでしまったからここにはいないの…死んだって言うのは正確な表現じゃないけど…」
(そういえば、サトコさんも元はガイドが居たんだよな…すっかり忘れてたよ…)
俺は、こっちで動いているマヤちゃん?を見た事が無いし面識があると言うほど絡んだ事も無かったし、サトコさんは最初から一人で現れたので俺の中ではいない事が当たり前のように思えていた。
(実感がないんだよなぁ…(汗))
「あ、なんか悪い事聞いちゃったのかな…」
デッドは手を口に当てて少し慌てたようだ。
「私は大丈夫よ、彼らが居てくれるし…えっと、こっちのタツヤ君は私の良き理解者で友人って所かしら?向こうの蒼君は彼のガイドなのよ」
(うっ、理解者で友人?なんか照れるんですけど(汗))
「ふ~ん…」
デッドは、ムスっとした顔で俺を見たが、ふぃっと顔をサトコさんに向けて、またしゃべりだした
「そのガイドだとかガーディアンだとかって何って聞いてもいい?」
「ガイドとガーディアンは少し違うから、ひと括りにして、こういうものだと答えるのは
難しいわね…私の偏見が入ってるけど、いい?
ガイドはここでの良きパートナーで、ガーディアンは使役する道具みたいな感じが強いかしら…どちらもデッド君とドラゴンの関係に似てる所もあるかもね。
何にしても人によっても扱いが違ってるだろうから、自分の目で見て確かめる事をお薦めするわ」
(サトコさん、ガーディアンを知ってるのか…)
「あ、僕の事はデッドって呼んでくれたらいいよ?それと…あのさ…僕もサトコ達に、その…ついて行ってもいいかな?」
デッドが同行を求めてきた…どうやらサトコさんの思惑通りに展開しそうな雰囲気になってきたようだ。
サトコさんは意外にも真面目な顔でデッドに尋ねた。
「付いてくる?私達が何処に行くと思って言ってるの?それと、どうして一緒に来たいの?」
(サ、サトコさん?何故そこで突き放すような事言うんだ?いつものようにニコやかな笑顔でいいわよって言えばいいだけだろうに?その質問はその後でもいいような…)
俺は正直、デッドが理由らしい理由なんて言えなくて、その結果、同行しなくなる方へ
話が流れて行くんじゃないかと思った。
でも、デッドは意外にも直ぐに返事をした。
「サトコ達が何処に行こうとしてるのかは知らないよ?
ただサトコは、ここに来てまだ2日目だと言ってたけど、それにしては、なんか色々と
良く知ってるのが不自然だしガイドが死んだというのだって死んでからまだ二日しか経ってない感じでは無いよね?
だからサトコは、おそらくガイドの死に関係する事のために、2日前に戻ってきたんじゃ
ないかって考えたよ?
それは違うのかもしれないし聞かれたくないなら無理に聞いたりはしないけど…
でもサトコは今1人なのだから僕がサトコのボディーガードになりたいって本気で思ったんだよ?
僕ね…ここに長くいるけど人と話をしたのサトコが初めてなんだよ!
だ、だから一緒にっていうのは変なのかな~?」
デッドは、いつもの軽い軟派野郎な部分をどこに置いて来たのやらで、直立したまま真っ赤になって、あさっての方を向いていた。
サトコさんは一瞬目を見開いて、ひきつった顔をしたけど、いつもの笑顔に戻って語りかけた。
「まぁ、私の事は気にしてくれなくていいけど…何日かしたら未知の場所に行く事になると思うので、人がいてくれるのは正直心強いわ、よろしくね」
そう言うとサトコさんはデッドに爽やかに握手を求めた。
デッドは無言で満面の笑みを浮かべてサトコさんの手を両手で握りしめていた。

Dream Quest 本編53

「たぶん…距離にも限度とかあると思うし、聞こえてるって言っても何処の誰の事なのかは僕が自分で見て確認しないとわからない事だよ?
何が聞こえてて何ならば聞こえてないのか僕にもわからないから説明できないよ…
聞こえたか?って聞かれても、僕には、どの話がそうだったの?って聞き返したいぐらいだよ!でも、お姉さん達の誰の名前にも聞き覚えなんて無いから名前とか普通に呼びあってたなら僕には聞こえてないと思うよ?
なんでもかんでも全部聞こえてるわけじゃなくて、たぶん聞こえてくるのは、ほんの一部なんだと思うけど…どういう基準なのかは僕は本当に知らないし僕自身が選べるわけでもないんだ…」
そう言い終わると青年はまた下を向いて、そしてちらっとサトコさんを見た。
「そう、話してくれてありがとう…所で、今も何か聞こえてるの?」
「え?いや…特に何もないけど?」
サトコさんは、それを聞いて何も言わずニッコリと笑っただけだった。
青年は、そんなサトコさんを見て少し頬を赤くして下を向いた。
俺は、二人のやりとりをただ見ていた。
(サトコさん、あの容姿は色々と都合がいいと言ってたけど、健全な青少年には罪つくりだよな(苦笑)でも、あの様子からみてサトコさんが仮面男と同一人物だと思ってるとは考えにくいよな?)
「さてと」
サトコさんは、陽気に向きを変えて少女の方を向いた。
「アテナさん?少し待たせちゃったけど、あなたは、もう休んだ方がいいわ」
「えっ?休むって…私どうしたらいかわからないです…」
「いつもはどうしてるの?」
「わかりません…気が付いたら本当に眠ってしまってて朝になってて目が覚めて…」
「起きた時、ここの事覚えてる?」
「いつも同じ場所で同じ事しかしてないので何となくは覚えてます」
サトコさんは口元に手を当てて何か考えてるような素振りで小声でブツブツ言っている。
「ガイドお任せ設定って事よね…それなら…」
サトコさんは彼女に何か説明してるようだ。
「じゃあ、それでやってみて」
「あ、はい…」
少女は、ガイドを抱えてガイドの耳元で何度も囁いた。
「ビクトリア聞こえる?私達…今日はもう休みましょう。
私も、少しゆっくり眠りたいの…ビクトリア聞こえる?」
ガイドの少女はゆっくりと目を開けて微かな声で答えた。
「了解しました、アテナ様…」
そう言うとガイドの少女はまた目を閉じてしまったけど、それからすぐに二人の姿は白い光と共にかき消えてしまった。
(なんか消えちゃったよ…?)
「サトコさん、あの二人どこに消えたんです?」
「消えたんじゃないわ、通常の睡眠…すなわち現実に戻っただけよ?タツヤ君も寝る時は、ああなるのよ?」
「俺もあんな風なんですか…」
「へぇ…なんかいいもの見ちゃったかも…」
青年は、そう言いながら、いきなり俺の方を向いた。
「君ももう寝た方がいいんじゃないの?明日は学校でしょ?」
そして、何故か俺に慣れ慣れしく語りかけてきやがった…
(なんで、オマエに君呼ばわりされなきゃならんのだ!?しかも学校だと!?俺は会社員だぞ?オマエより確実に年上だぞ?何考えてやがるんだ?)
「俺は学校なんざ何年も前に卒業して、今では酒もたばこも夜更かしも堂々とできる歳なんだが?オマエこそ子供は寝る時間だろう?」
「えっ?君僕より年上なの?てっきり同じぐらいの歳だと思ってたよ~」
(そもそも、何歳差までを同じぐらいと言っていいんだろうな?いや、たとえ1歳しか違わなくても成人式を終えてるのと未成年では天と地ほどの差があるものだろう?
そんな事より俺がコイツに子供っぽく見られてるという事の方が重大かもな?やっぱり、こういう変な余裕と軽さのある奴は苦手だ…)
「俺が起きてたら何かオマエに都合の悪い事でもあるのか?」
俺は、大人の余裕を見せながら?ちょっと意地悪く聞いてみた。
「別に都合とかはないさ~親切のつもりだったんだけどな~」
そう言いながら彼はサトコさんをちらっと横目で見た
(はは~ん、そういう事なのか?(笑))
その時サトコさんが話しに割り込んできた。
「そういえば、あなたと私だって同じぐらいの歳のはずだけど、どうして私はお姉さんなわけ?」
「え?なんか凄くしっかりしてるし、それに…あの人は、あなたをさん付けで呼んでて、
所々丁寧に話すし、あなたはあの人を君付けで呼んで、普通にタメ口だからかなぁ?」
俺は一瞬ギクっとした。
たぶんサトコさんも同じように感じたんじゃないかと思った。
しかし人の素直な感性ってのは時にこちらが意図しないような部分をズバッと突いてくるものである。

Dream Quest 本編52

「あのね、君達に共通してるシステム?そういうのは僕には全然わからないけど君達の仲間?が襲われたのは、僕の知る限りでは今回が初めてじゃないかな?
それ以前に襲われてるのは、襲ってた奴と同じシステム?の奴らばかりだよ」
「ねぇ、あなたって人と仲良く関わってるようには思えないんだけど、その割には情報に関しては、やたら詳しいわよね?それは何故なのかな?あなた特殊能力でもあるの?」
「僕には、たぶんそんな特殊能力はないよ?君達の誰が人で誰が人では無いのかその区別すらできないもの…グレイが…えっとドラゴンがね、なんかラジオというか無線機と言うか、そんな能力みたいのがあるみたいで、多少遠くても人の話してるのが聞こえたり、なんかあったりしたら、色々と受信?できるようなんだよ~
僕はそれを聞いて色々分かるし…それで、その場所へ行ってみたりしてるんだ」
サトコさんは青年の話しにかなり興味があるような感じだ。
「それは、あなたが、あのドラゴンと会話して聞いてると言う事?」
「んと、テレパシーみたいに?僕の頭に直接聞こえてくるよ?でも会話…じゃないような気がする…情報は本当にラジオから勝手に聞こえてくるような感じだよ…グレイは来いとか飛べとかは、僕の考えた通り、言った通りに行動はしてくれるけど、彼からそれで返事を貰った事も無いし、親しげに話をして来る事も無いよ?ただし僕が危険な目にあうと僕が何も言わなくても、それを攻撃したりはしてくれるかな…」
(ふむ、コイツ意外と素直でいい奴なんじゃあ?って…人の会話が全部聞こえてくるって俺らの話しも聞かれてるんじゃあないのか?(汗))
サトコさんは自分達の話しも聞かれてるかも知れないという事には気づいていなようだ。
「なるほどね…」
色々と感心して話をしているサトコさんを俺は、ツンツンと突いて小さく手招きしてサトコさんだけを連れて、その場から少し離れた。
「どうしたの?」
不思議そうなサトコさんに俺は半分ぐらいパニクりながら耳元に小声で囁いた。
「あいつ、人の会話がラジオのように聞こえて来るって、それじゃあ俺たちの会話も全部
聞こえてたんじゃあないんですか?あ!今こうやってしゃべってるのも聞こえてるのかも…(ボソボソ)」
「彼のドラゴン君の性能が未知数だけど、私だって自分の存在を社に知られるわけにはいかないし、出来れば襲ってきた敵とかにも知られたくないわけだし、そのへんのガイドでも少なくとも人間よりは遠くの音や声が聞こえるのよ?それに対して何も対策してないわけないじゃない?特に会話とか何処で誰に聞かれてるかわからないような無防備な個人情報の漏出に対してのフィルタリング機能は、私も蒼君も結構優秀で万全よ?
それでも聞こえちゃったってほどドラゴン君が優秀だったら諦めるしかないわね(ボソボソ)」
「諦めるしかないってそんな呑気でいいんですか?(ボソボソ)」
「う~ん彼はとりあえず敵じゃなさそうだし、聞いた事を言って回るようなタイプでもなさそうだし、まぁ聞こえてたなら事情を全部言って是非とも同行してもらおうかしらね?(ボソボソ)」
「そんなんでいいのかな…(ボソッ)」
「まぁ、本人に確認するのが一番よ!行きましょう」
そういってサトコさんはニコニコ笑って戻っていった。
(本人に確認するって…聞かれて素直に本当の事言うとも限らないと思うんだがな…)
「何かあったんですか?」
青年は、わけがわからない感じで普通にしゃべっていたが全部聞こえてるのに、しらばっくれてるのでは?と思えたら、俺は気が気では無かった。
そして、少し離れて観察するように青年を睨んでいた。
青年も俺の視線に気が付いたのか俺をちらっと見て少し首を傾げている。
「あのね、色んな話が勝手に聞こえてくるっていうのね、私達の内輪の話しも全部
聞こえてるんじゃないか?ってそれが気になるって話しだったのよ?で?正直なとこと聞こえてるのかしら?」
(俺は内緒話のつもりだったのに、そんなストレートに聞くのかよっ!!(汗))
サトコさんは、いつもの不気味な笑顔だ。
「へっ?全部がいっぺんに聞こえてきたら何言ってるのか、何が起こってるのか
全然わからなくなると思うけど?僕は、それが聞き取れたり聞き分けられるような超人なんかじゃないしね?聖徳太子の生まれ変わりにでも見えた?」
またしても軽い感じで返答する青年に対して、サトコさんから笑顔が消えた。
青年はサトコさんから目を伏せてその後、真面目な顔でサトコさんを見て話を続けた。

Dream Quest 本編51

サトコさんは少女達の前に座りこんで話を始めた。
「あなたがアテナさん?身体は大丈夫?」
「あ、はい、私は大丈夫ですけどビクトリアが…」
「蒼君、お願いできる?」
サトコさんがそう言うと蒼はガイドの少女の額あたりに手を乗せていた。
「データーの破損は無さそだ、放っておいても自己修復できるだろう」
俺はその様子をじっと見ながらいささか不謹慎な事を考えていた。
(ああいう事もわかるんだ…しかしアテナにビクトリアって何処かの神様の名前だっけ?自分にそんな名をつけて人前で平然とそういう名前で呼べるって、やっぱ若いんだなぁ…
それに俺この子達の事特に心配とかしてないよな…ひょっとして俺って平気で人を見捨てられる冷たい人間だったんかな…)
「あのっ、助けて頂いて有難うございました」
少女は何ともないと言いながらも全身傷だらけで泥だらけだった。
少女のお礼を聞いて俺は何となく、助けなきゃいけないとか思ったわけじゃない事に複雑な気持ちになった。
サトコさんが、こういうのに知らん顔して通り過ぎるような人じゃ無くてよかったように思う。
俺は、そんな気持ちになっていた。
「これって、虫にやられたわけじゃないわよね?何があったの?」
「えっと、知らない男の子が…オマエのガーディアンは強い?って聞いてきて、私意味が分からなくて黙ってたら、俺のガーディアンとどっちが強いかやってみようとか、そんな事言ってて、私はそんなの承諾してないのに、いきなり向こうのガイド?がビクトリアに襲いかかってきて、なんか一方的にやられちゃって…そしたら負けた罰として虫の刑だとか言って、何したのかはわからないけど沢山の虫が私を追いかけて来て…」
そう言うと少女の目からじわっと涙があふれてきた。
「相手の特徴は覚えてる?」
サトコさんの問いかけに少女は何度も目をこするように涙をぬぐって答えた。
「小学生かな?メガネの賢そうな少年で、なんかアニメに出てくるような女の子のロボットみたいなのを連れていて、ガーディアンとか言ってました…」
「なるほどね…結構厄介ね」
サトコさんは、顔をあげて暫く考えを巡らせているようだったが、さっぱりわからないという感じではなく、なにか思い当たることがあるような感じだった。
「今日の事はガイドから社の方へ報告が行くと思うけど、それで社が何か手を打ってくれるとかはあまり期待できそうもないわね」
俺はサトコさんの話を聞いてなんだか腑に落ちない気分だった
(どういう事だ?不快な事や迷惑行為排除や危険回避が最優先されるんじゃなかったのか…?)
そうしていると後ろの方でバサバサという羽音が聞こえた。
どうやら例の青年が予告通り戻ってきたようだ。
青年はドラゴンから飛び降りたら軽く走りながら、まるで普段の定位置であるかのように何食わぬ顔でサトコさんの横に来たのだった。
(何なんだよ、コイツは…)
ドラゴン、彼が下りた後、少し後方の茂みに中に降りていった。
「向こうでもやっぱりその子と同じだったみたいだね~」
割と軽々しく見てきた事を言う青年に対して、サトコさんは少しキツイ感じの口調で尋ねた。
「それは本人から聞いたの?」
「直接会話はしてないよ?」
「全くの部外者であるあなたが何に襲われたのかなんていうのが、本人に聞かなくてもわかるの?」
青年は意外にも少し真面目な顔つきをして、ボソっと告げた。
「僕は今日初めて見たわけじゃないからね…もう何人も同じように襲われてるのを見てる。
だから今日のも同じ奴にられたんだなと思った」
「なっ…いつも?何回も見てるの?それで見てただけなのっ?」
サトコさんは、怒鳴るほどの大声ではなかったけど明らかにキツイ口調で言った。
青年もさすがにムカっとした感じの顔になったけど、それでも何故だか静かに目伏せてサトコさんに言った。
「君は、現実でヤクザとか不良に襲われてる人を助けに行くの?行けるの?見て見ぬ振りするんじゃないの?僕もそうしただけだよ?遊びとは言え彼の兵器は相当強いからね?行けば無傷で済まないかも知れないんだよ?無謀と勇気は違うんだよね?僕は無謀はしない!それは誰かから責められて当然の事なの?」
サトコさんは彼の言葉を悟ったかのように神妙な顔つきに戻った
「そうね、あなたは悪くない…責めるような事言ってごめんなさいね」
(そうか…そうだよな…)
俺は青年の事を軽くて調子良くてヘタレな野郎だと思っていたけれど、彼の言葉を聞いたら自分も大差ないと考えさせられた。
サトコさんは少し下を向いたまま何だか怖い顔して蒼に語りかけた。
「蒼君、この事知ってた?」
「ガイドが襲われる事件?社からは、そんな事があるという情報も注意も警告も指示も一切ないが?」
それを聞いて青年は少し首を傾げてから、何かを思い出したように話し始めた。

Dream Quest 本編50

「普通の人間が生き物を作るってのは考え難い事だから、あれは彼の抱え込んでる多くの物が、彼から出て?離れて?そしてそれだけで意思を持つように集まって…こちらの世界の幾らかの似たようなものを取り込んで形になってるんじゃないかと思うけど、彼自身は気がついてはいないかもね…ある種の分身みたいなものといえるのかな?」
「何かが集まって形をつくる?」
「私達だって、ここでは現実にいる元の自分というデーターが集まって、そっくりそのままに形成されてる分身みたいなものだし、ここの世界の生き物とかもね人がここに持ってくる記憶…見たもの、聞いたもの、触れたもの得た情報以外にも、思考や感情…特に感情などはパワーが大きいから、人から出て個別になった時、独自で何らかの形を作ろうとする傾向が大きくなるみたいなのよ。
そして形になったものが生物であったり住人であったりして、この世界そのものを別の角度から作り上げてもいる」
(なんかまた難しい話しになったな…(汗))
「人から出て個別に…?」
「う~ん、どう言えばいいんだろう…呪いとか言霊とかいうのは知ってる?」
「知ってる…ような、知らないような…?聞いた事がある…程度ですが(汗)」
「それが式や怨霊に変わって行くような感じだと思うんだけど…」
「四季や音量…?さっぱりわかりません…(汗)」
「まぁ、あのドラゴン君は彼から生まれたのだとは思うけど、普通の人間で自然にそんな事が起きるのかしら?起きるとしたら…」
「あの…普通の人間、って言いましたよね?じゃあ普通の人間じゃないなら作れるものなの?というか普通じゃない人達ってサトコさんみたいな技術者な人達?」
「この場合の普通、普通じゃないってのは個人限定の事で最先端の技術や道具が無いと、どうしようもないようなものじゃなくて…魔術師とか妖術師とか呪術師とか教祖様とか…
まぁそういう人達って事かな?
ああいう人達って意識と言うのか意思と言うのか精神と言うのか魂と言うのか…まぁ、そんなものの半分ぐらいが眠って無くても常にこちら側にいる人達!って感じ?ああいう人達が独自に“なんとか界”とか呼んでるそれぞれの特別な場所は、おそらくだけど、ここの事じゃないかと思うのよ…或いは場所そのものは別なのかもだけど、ここと繋がってるのでは?と私は思ってる…全部、私の仮定の話だけどね」
(なんだか話しがオカルトになってきた…)
「えっと…」
俺が続きを聞こうとした時サトコさんは少女を見ながら真面目な顔で言った。
「彼女の事も気になるし、ちょっと長話は後にしましょう。二人とも私の考えを簡潔に言うわね?
さっきの彼の事なんだけど彼が探してるのは私かも知れないという事で、もしそうなら
私はその理由を聞きだしたいと思ってる…これが1つ目
また、何処まで信じていいかは解らないけど、彼の知ってるという外の情報とやらを聞いてみたいと思ってる…実際ここで他のモニターに何か尋ねてみても外の情報は殆どわからないと思うし、外に出たら人と会うかさえわからない…もし会えても話が出来るとも限らない…なので彼から聞ける事は些細な事でも聞いておきたいと思うし、ひょっとしたら彼は私の知りたい情報を持っているかも知れないとね…これが2つ目
だから、もし気紛れに彼が戻ってきて、そしてさっきのように同行を申し出るような事があれば、とりあえずしばらく一緒に居させてみてもいいのではと思ってるの。
ただし、彼の探し人が私であるかもとか、私の本来の姿の事とか、私達の旅の目的とか、その辺りの細かい事情などは彼には一切教えない方がいいと思う…
もし聞かれたら、そうね…この世界の未知なる事を知りたい夢見る無謀な冒険野郎とその御一行様!とかでいいんじゃないかな?というのが私の希望なの…」
サトコさんは、かなり早口で一気に言い終えたようだった。
その後、暫く沈黙が続いた。
「あの…何で何も言わないのかな?」
サトコさんが不安そうに俺達を見た。
俺は何を聞かれてるのか良く分からずにいた。
「えっ?ここはなにか言う所?」
「あのね~いいとか、それは嫌だとか賛成とか反対とか意見とか、とにかく何もないのは変でしょ?」
サトコさんは、本当の女の子のように顔を突き出して一生懸命な感じだ。
「えっ?反対する理由とか思いつかないし…サトコさんに同行するっていうのが俺の目的みたいなもおだし…言われた通りにすればいいんだなって無言で納得してたっていうか…」
「俺様はタツヤのガイドだからな?オマエの希望も事情も知った事じゃない」
蒼は相変わらずだった。
「と、とりあえず、どうもありがとう。
じゃあ、その時があった場合は打ち合わせ通りに宜しくね」
「うん、大丈夫ですよ」
(今のって打ち合わせだったのか?(汗))
サトコさんはニコっと笑ってすぐに少女の方へ走って行った。
俺と蒼も後に続いた。

Dream Quest 本編49

「彼の言ってた事が本当だとしたら彼は野良の冒険者という事になるかな」
「野良?」
「特定の会社や組織の関係者でも無く、そう言う場所のお客でも無く全くの個人でこの外の世界をうろついてる人物…それも結構長くいるって感じかな?」
「普通の人で、なんの機器も無くてもそんな事ができるんですか?」
「眠ってしまってから夢の自覚ができるかどうかが大きいかな?ただし夢を見ている自覚では無くて、夢の世界にいるという自覚が必要かもね」
「なんか微妙に難しいんですね」
「物質界以外の世界ってのは、揺るぎない肯定によって具現化し、それが無いと決して、そこに繋がる事も無い!かなっ?」
俺は自分の頭でもわかるように知ったものに置き換えられないかと思い、思いついた喩で聞いてみた。
「う~ん、オバケとか幽霊とかを完全否定する人には見えないって言われてるのと同じ感じ?」
「感覚は近いかもだけど、あちらは肯定さえすれば必ず見えたり会えたりするとは限らないけど、夢の中ってのは誰もが毎晩のように訪れていて、よく知ってる場所だからね。
ただ、知っている場所だっていう自覚のある人が極端に少ないだけ」
「彼には、その自覚があるという事?何か目的でもあるのかなぁ」
「自分の意思でこちらの世界を動きまわっている人は、大抵何か目的はあると思うわ…
幾つかの企業や組織は、営利であったり、探索と発見であったり、発展であったり、可能性であったり、何かしらの目的が必ずあるわけだし、ただ…個人の目的なんてのは、ものすごく個人的な事かも知れないけどね」
「彼が、ものすごく特殊な人間だから機械やシステムに頼らずに、ここにいられるというわけではないんですね?」
「うん、おそらく何の自覚も無く夢を見てる事さえ気づいてない人でも迷い込んで来れる場所よ?起きたら現実に帰れるし大抵覚えても居ないし、覚えてても…ああ単なる夢だったか~で終わっちゃうでしょ?だからここに来た事のある人は私の想像よりも遥かに多いかもね」
サトコさんは、そういって笑いながら蒼の方を向いて尋ねた。
「ねぇ蒼君は彼をどう思った?」
「男の方は普通の人間だが、なんか黒いな…連れてるものはあの男の思念の塊みたいなものが核となり、こちら側の似たような物を幾つか取り込んで具現してるものである可能性が高い」
相変わらず二人の会話は難解だ。
(俺にもわかるように話してほしいもんだ)
「黒いって?腹黒いって事?」
俺は思わず聞き返していた。
「黒は色だが?」
「黒が色なのは俺だって知ってるよっ!蒼の言う黒の意味を聞いてるんじゃないかっ!」
「色しか見えないのに、意味など言えるか!」
「蒼は、いったいいつも何を見てるのさ?」
思わずサトコさんが申し訳なさそうに俺達に割って入ってきた。
「蒼君自身は自分の能力の詳細など自分ではわからないんだよ…私達だって、どうやってものを判別したり理解したりしてるのか自分の何がソレをやってるのか、その詳細なんて殆ど知らないでしょう?」
「そう言われてみれば、そうかも…」
「ガイドは具現基本形成組成データーを読み取る事が出来るので、それが何なのかはだいたいわかるの。
えーっとね、あるものを見た時、これは酸素1と水素2で出来てるので、おそらく水だろう!ってな感じね!でも、その液体が人には水であると即座に確実に解る術もないし、飲める水なのかどうかもわからないので、そういうのがわかるという意味ではガイドは凄いのよね!でもその水に色が見える場合…それが汚れとか泥とか毒とかぐらいならば成分なのでわかるだろうけど、わけのわからないものの色だった場合は、さすがにわからない…
特に人の思考や感情ってのは、ものすごく複雑だからね」
「まぁ、とりあえずは悪い奴なんですね?」
「う~ん、悪人だとは限らないかな…何か軽くて調子良くて明るそうに見えるけど、心の奥底には沢山のネガティブな思いを抱え込んでいるのかもね…ここに自主的に長く居座ってるような人物は、そういうなんか人には簡単に言えないようなモヤモヤしたもの抱え込んでるとか割と多いんだよ…」
「まぁ何も無い真のリア充は、こんな所で遊んだりする必要もなさそうですもんね(汗)」
(しかし奴は根暗な夢世界引きこもり君か?)
「ドラゴンってのは、彼が作ったのかな?」

Dream Quest 本編48

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「あなたような得体の知れない人と和気あいあいと旅など出来そうもないけど?」
「じゃあ、僕の自己紹介でもしようか?」
「自己紹介は結構です!とりあえず何があったのか彼女達から聞くからいいわ」
「う~ん、彼女達からはたいした情報は聞けないと思うけどな~僕の事も知らないだろうし…」
「だいたい、さっきからあなた一人でしゃべってるけど、向こうに隠れてるあなたのお連れの方の意見は聞かなくてもいいのかしら?」
「ん~?彼は人の言葉は話せないし人の事情とかにも基本無関心さ?見たら怖がる人もいるしね~」
(見たら怖い?こいつオバケでも連れてるのか?)
青年は、特に何かを隠す風でも無く良く言えば気さくに…悪く言えば慣れ慣れしく?会話を楽しんでいるような感じだ。
次の一瞬、奥の茂みからガサガサと音がして何か大きなものが飛び出してきた。
蒼は、とっさに俺の前まで戻り俺を背にし、ソレを前にして身構えた。
サトコさんも振り返りソレを見て珍しく?驚いているようだった。
「ドラ…ゴン?」
そこには、俺達を目の前にしてバサバサと羽音を立てながら空中に止まってこちらの方を
見ている灰色のドラゴンがいた。
青年は、なにか余裕な感じで俺達に向かって言った。
「心配しなくても何もしないよ~ただ、そこの猫ちゃんはさ、さっき僕に少しでも傷でも付けてたら、その場で黒こげになっちゃってたかもだけどね?あはは…う~んと、向こうの方で何かあったみたいだね?」
青年は額に手をかざしながら遠くの方を見て言った。
俺達は、少し茫然としていたが、サトコさんはその様子を見ながら小声で呟くように尋ねた。
「何かって…?」
青年は少女の方をチラリと見て答えた。
「たぶん僕の知る限りで~今日の二人目の犠牲者かな?」
サトコさんは、少女と青年を交互に見ながら尋ねた。
「犠牲者って?」
「僕ちょっとみてくるね~今の問いは彼女達に聞くといいんじゃない?じゃあ、また後でねっ!」
そう言うと、青年はバサバサと飛んできたドラゴンに飛び乗った。
「えっ?ちょっと!」
サトコさんは手を伸ばして彼を呼びとめたが、彼はニコニコしながら手を振って飛んで行ってしまった。
俺は何か伝説の未確認生物を目撃してしまったように興奮していた。
(すげードラゴンなんているんだ…ちゃんと人乗せて飛んでるし…俺もあんなの乗ってみてえなん?猫ちゃんって蒼の事か?ぷぷぷ 
黒こげって言ってたから、あのドラゴン炎でも吐くのかなぁ…まぁ黒こげにならなくて良かったが(汗))
俺が愉快な妄想を思いめぐらせている時、サトコさんはトラゴンが飛んで行った方を見上げながら独り言のように呟いて首を横に振っていた。
「また、後でって…」
その後サトコさんは、チラっと少女の方を見たけれど少女は、こちらを気にせず地ベタに座りこんだままガイドの髪をなでながら心配そうに覗きこんでいる。
彼女らを気にしながらも、サトコさんは俺の服の袖を掴んで引っ張り、コソコソと少女の
後ろ側の方へ連れて行った。
とりあえず少女に話が聞えない程の距離で、でも少女の様子は良く見えている程の場所だ。
サトコさんは俺の方に顔を寄せてボソボソと小声で話しかけてきた。
「ね、さっきの少年の話し聞いてた?」
「え?一応聞こえてましたよ?」
(俺なんか、近くにいても全然無視状態でしたけどね…)
「彼、人を探してるって言ってたよね?」
「片目の仮面男でしたっけ?」
「ひょっとしたら、私の事じゃないかと思ったりするのよ?」
「えええっ?」
俺は自分が来たばかりで、しかもここで人すら見てなかったので気にも留めて無かったのだが、仮面男は自分かもしれないというサトコさん話しに思わず大声をだしてしまった。
「大声出さないの!」
「あ、すいません…」
サトコさんは口の前で人差し指を立てながら少女の方をチラッと見て特に変化が無いのを確認してまた俺の方に顔を近づけてきた。
「あんな目立つ人、会ってたら忘れないと思うんだけど、探してるのって別人なのかしらね…」
「まぁ、こういう場所だと単なるファッションで片目の人というのも、結構いるような気がしますから…別人かもですよね?」
(そういえば、サトコさ…いやサトシさんの仮面ってファッションなんだろうかな…)
「まぁね~でも、彼が私と同行したいとか言いだしたのは私が本人だってわかってて言ってるんじゃないか?って、ちょっと考えられるのもあるし…もし私の事だとしたら何故探してるのかも気になる所なのよね」
「あの人、素がああなのか、なんかキャラ作ってるのかいまいちわからない感じはありましたよね…なんか凄いの連れてるし何者なんでしょう?」

Dream Quest 本編47

次の一瞬、サトコさんはツカツカと青年の前に歩み寄り胸ぐらを掴んで怖い顔で責め寄った。
「あなたがこの子達を襲ったの!?」
「えーっ?違うよぉ~嘘だと思うなら、その子に聞いてみなよ?」
サトコさんは、少女の方を見た。
少女はガイドを抱えるように座ったままサトコさんと青年のやりとりを見ていた。
「えと…その人じゃありません、というか、全然知らない人ですけど…」
「ほらね~?」
まだ若そうというのもあるが、何となく軽い感じの奴である。
サトコさんは青年の胸ぐらを掴んだ手を離さないまま蒼の方を向いて尋ねた。
「蒼君、こいつは何者?」
蒼は、青年の方では無く茂みの方を睨むように見ていた。
(蒼は、何を見ているんだろう?)
「そいつは、さっきガイド連れではないのが2名いると言った、もう一人の人間だ。
そこの若い女の後をつけてやがった。そしてそいつの連れが向こうにいる」
蒼は、その連れとかいう奴の事を気にしているようだった。
蒼が言い終えるとサトコさんは掴んでいる手にさらに力を込めた。
「手負いの彼女達をつけ狙ってたの?何が目的なの!?」
「ちょっ…誤解だよ~酷いな~危なかったら助けようかと思ったけど、君達が来たから様子を見てたんだよ~ほら、僕って一応部外者だからさ~」
「部外者…?」
サトコさんの手が緩んだ時、青年は少し後ろに下がり、そしてそいつは何故かサトコさんの手をさりげなく握りながらしゃべりだした。
「僕は、何処に属さない真の旅人なんだよ?結構長くこの世界を旅してるんで、かなり色んな事を知ってるんだよ?でも基本的にもめ事には首を突っ込まない主義なんだけどね!まして、お遊びのバトルなんてのは特にね」
「お遊びのバトル?」
サトコさんは、険しい顔で青年を睨みつけた
「だって、何処かの会社がお遊び用に作ったお人形同士を戦わせて喜んでるガキばかりだよ?」
「あなた…ガイド…あの子達が襲われてる時にも傍で見てたの?それで見てただけで
何もせずに?呆れるわね…」
俺にはいまいち何の事だかわからないのでただ、二人のやりとりを見守っていた。
少女も不安そうに二人のやりとりを見ているようだった。
蒼だけは、二人の事など知らん顔でずっと茂みの方を睨んでいた。
俺は少女の事が少しは気になったが、あの青年が不意打ちで襲ってくるとは思えなかったので、蒼の隣まで行って蒼に小声で話しかけた。
「ねぇ…向こうに何がいるの?」
「よくわからないが、完全な人造物ではないと思う…おそらくここの生き物か、それに近いもの…」
(蒼にも解らない事ってあるんだな…)
「気になるの?それとも何か害が?」
そう聞いた俺に、蒼は噛みつきそうな顔を向けて言った。
「わからんから警戒してるんだろうが!」
「あ、うん…ごめん」
俺はその後は黙ってしまった。
そしてその場でサトコさん達の方を見た。
青年は少女の方をチラっと見て
「そりゃだって、その子はどうかは知らないけど」
そう言うと、サトコさんに顔を近づけながら
「相手は対戦して遊んでるだけの子供だし、そこに割って入るのは大人げない感じしない?」
「大人げないって…あなただってまだ子供じゃないのっ!」
「そう?だったらお姉さんが色々と教えてくれる?僕の知ってる事なら教えてあげられるし」
「お、お姉さんっ!?(汗)」
サトコさんは、そう呼ばれて思わず彼の手を振り払い2歩ほど後ずさりしていた。
「僕ね、人を探してるんだよ?お姉さん知らない?片目に仮面した男の人なんだけど…」
一瞬サトコさんの顔色が変わったかのように見えた。
でも、サトコさんは直ぐに普通に戻って
「私達は、ここに来てまだ2日目の新人で、人に会ったのは彼女とあなたの2人だけよ?残念だけど力になれそうも無いわ」
「ふ~ん、そうなんだ…でも僕、色々知ってるし、それなりに強いから、お姉さんはさ~こんな場所なんかさっさと出て、もっと外に行こうよ?僕が色々と案内してあげるし、何ならボディーガードになってあげてもいいよ?」
サトコさんは少し顔をひきつらせながら答えた。
「さっきから色々知ってるって…いったい何を知ってるのかしら?」
「色々あり過ぎて、いっぺんには話せないよ~?道中のんびり会話代わりにって事でどう?」
「どうして道中を共にしたいのかしら?」
「お姉さん、僕の好みだからかな~」
「そんな事が理由なわけ?」
「それが理由じゃ駄目なの?」
(なんか、俺を無視して向こう側で色々と盛り上がってる?ような…しかし、話しに加わる気にならないと言うか話しに加わる勇気が無い?それはちょっと違うよな?まぁサトコさんに任せておこう…)

Dream Quest 本編46

蒼は蚤に負けないほど何度かジャンプしてあっという間に蚤の所に到達してた。
(すごいな…本当に崖を掛け登る狼みたいだ…)
俺は蚤のすぐ横を通り抜けるように走りながら身をかがめて後方の1匹の足を蹴り上げた。
蚤は簡単に仰向けに転んだ。
(よしっ腹ががらあきだ!)
俺は飛びあがって両手をめいっぱい振りあげた後、蚤の腹めがけて思いっきり振りおろした。
「どぅん!」
重く鈍い音がしたが致命傷には至らなかった。
(まだかっ…意外としぶといんだな)
サトコさんは女の子の所に行き、女の子の手を引いて後方の岩陰に連れて行った。
恐らく、隠れてろか休んでろという所だと思う。
蒼は、斬ってると言うよりは叩いてると言う感じに見えるけど、それでも1発当てるごとに蚤はかき消すように消えてゆく。
(いいなぁ…武器…俺も欲しいっ!)
「タツヤっ!1匹飛んでるぞ!!」
蒼は俺の方など見ていないはずなのに怒鳴るように叫んだ。
俺はとっさに上を見上げた。
「うわぁ」
上から岩でも落ちてくるかのような巨体を、俺は横に飛んで避けるのが精いっぱいだった。
(あぶねー潰される所だったよ…)
俺は地面に這いつくばるような格好で立ち上がろうとしてたが、飛んで落ちてきた奴は直ぐに方向を変えて覆いかぶさってきた。
俺は、そのまま仰向けになり覆いかぶさるそいつの腹を思いっきり蹴飛ばした。
そいつの全ての動作が止まると同時にそいつは粉のように散りながら静かに消えていった。
(やったぁ!1匹倒した!!残り後1匹…)
残りのやつを見た瞬間、ソレは俺に向かって高く飛びあがっていた。
「うぉっ!」
(また飛んだ!どこに降りてくるんだ?)
俺はどっち方向に逃げようか迷い動くタイミングを逃して動けなくなり落ちてくる蚤を見ていた。
(やばいぞ…)
次の瞬間、蚤は俺の頭のすぐ上で何かが背中から腹に貫通して串刺しになり、そして静かに消えたのだった。
(ひぇ~助かった…)
その時、消えた蚤の背後から何か落ちてきた。
俺は一瞬ドキッとしたが、とっさに見覚えのあるソレを抱きかかえていた。
落ちてきたのは少女のガイドだった。
蚤にトドメを指して力尽きたような感じだ…
「おい大丈夫か?」
ガイドは俺を見ようともせず、そして答えようともせず、ただ俺の手を振り払うように地面に降りて蚤を貫いた大きな槍のような武器を引きずりながら、無言で歩きはじめた。
「おい!」
(ご主人様の所に行こうとしてるのか?自分の事も他の事もどうでもいいのか?あ~もうしょうがないなぁ…)
俺はガイドの少女の腰の部分を抱えて走りだした。
大きな岩陰までいくと、サトコさんと少女がいた。
岩を背に座っていた少女は俺の抱えてるものを見た途端、泣いて叫びながら走ってきた。
「ビクトリア!ビクトリアっ!」
少女は、ガイドの少女に何度も呼びかけていた。
そのたびにガイドは薄らと目を開けて、ほんの少し笑うような顔をした。
サコトさんも少女の隣で心配そうにガイドに触れていた。
「恐らく外傷だけだと思うので大丈夫よ…」
そういうと蒼の方をチラリと見た。
(恐らく?今のサトコさんにはガイドの状態が全て解るわけじゃないんだろうな…)
蒼はサトコさんの視線を感じたらしいけど、全然あさっての方向を見ながら武器を構えて低くて小さい声で
「そいつは後だ!向こうの陰に怪しい奴がいる」
そう言うと、そこに向かって走って行った。
俺とサトコさんは、少女を庇うように少女を背にして立ち上がり直ぐそばの茂みを見ていた。
「ちょっと、ちょっと、何なの!?危ないなぁ~」
「そこで何してる?」
「何もしてないよ~」
「とりあえず向こうで話を聞かせてもらう、歩け!」
何となく若くて軽そうな男の声と蒼の低い声が聞こえた。
後頭部に蒼に刀を突き立てられて降参のポーズのように両手を大きく挙げた青年が、茂みの中からしぶしぶこちらに歩いて来た。

Dream Quest 本編45

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なんか叫び声のようなものが聞こえてくるような気がする…
その声は徐々に近づき大きくなっていった。
その姿が見えた頃、向こうも俺達が見えたのか
「きゃぁぁ、すいません!ごめんなさい!どいてくださーい!!!」
ソレは物凄いスピードで俺達の隣を叫びながら通り抜けて行った…
そのすぐ後ろを10匹ぐらいの蚤がピョンピョン飛びながらソレを追い掛けていた。
「きゃー、もう何なのよぉぉぉ」
その軍団は俺らに見向きもせずに嵐の如く通り抜けてゆき、声もだんだん遠ざかっていった。
「サトコさん…蚤って仕返しするとか仲間を呼んで大群で襲いかかるとかは無いんでしたよね?(汗)」
「えっ?あれは、私達が逃がした蚤じゃないわよ、たぶん…彼女が蚤の巣にでも突っ込んだんじゃないかしら?あはは…」
「蚤の巣ってのがあるんですか?(汗)」
「さぁ…私は見た事ないけど(汗)」
俺とサトコさんは、掛け抜けて行った先を眺めながら漫才のように話をしていた。
「でもガイドがいるから大丈夫よ」
「ガイドらしいのは見掛けなかったような…?(汗)」
(蚤の1人がガイドでしたとか…さすがにそれは無いよなぁ、でも逃げてたのは1人だったよな?)
「ひょっとして彼女のガイドは蚤の巣で蚤と格闘中とかでしょうか?」
「ガイドは、パートナーから離れたりしないはずなんだけど…」
「あれがガイドなんじゃねーか?」
蒼は、草の方を指さしていた。
ガサガサと音を立てて草が揺れ草をかき分けるように小さい影が現れた。
そこに居たのは中世の西洋のお姫様のようなドレス姿の少女だったが、まるで強姦にでも
襲われたかのようにズタボロで、片手は力なくだらりとさせ足は引きずっている。
(なんだ…あれは…?)
サトコさんはガイドらしき少女に掛け寄って行った。
俺もすぐ後を追っていた。
「どうしたの?何があったの?」
「蚤の大群に襲われたんじゃ…?」
「蚤なんか何万匹来たって、こんなになる事はあり得ないわ!」
サトコさんが珍しく怒っているかのように大声で言った。
「あ…て…」
(あて?)
「アテナを…たす…け…て」
「あてな?」(なんじゃそりゃ?)
「たぶん、この子のご主人様、さっき通り過ぎて行った女の子のここでの名前でしょう。蒼君、場所分かる?」
「どうかな…今ここに人間は俺らを除いて人間は16人いる。さっき女が走って行った方向だけでも4人はいる」
(人とは全然合わないのに結構居るんだな…)
「その中でガイドを連れていないのは?」
「ん~2人いるが、一人で移動してる方がさっきの女っぽいな、左に動いてる」
「ガイド無しが2人いるの?」
「一人はガイドは連れていないが、別のが傍にいる」
サトコさんは、急に険しい顔になって低い小声で呟くように言った。
「そっちは関わらないように少し周り道して左に行きましょう。何か出てくるかも知れないから周りの気配に注意してね」
「うん…」
蒼はガイドの女子を肩に担いで先頭を進みだした。
俺を真ん中にして後方にはサトコさんが来てる。
俺は何を言ったらいのか、何か尋ねてもいいの事なのか全然わからなくて黙っていた。
俺達は一列になって草の中を走っていた。
少し視界が開けて、背の低い草がまばらに生え、所々大きな岩などが転がる様に幾つかある場所に出た。
「あそこらしいな」
蒼が先の岩の方を指さした。
岩に隠れながら右や左に移動している。
握りこぶしほどの石を幾つか抱えて蚤に向かって投げているようだ。
蒼は、抱えていたガイドを岩陰に下ろした。
女の子は泣きながらとにかく無我夢中で、石を投げまくってるという感じだ。
「石をぶつけられたらたまらんから左右から回り込むぞ」
「じゃあ、私とタツヤ君は左からいくね、あんな若い女の子だって戦ってるんだもの!タツヤ君も頑張ろうね」
そう言って、ニッコリ笑うサトコさんの笑顔が少し怖かった。
「はい、頑張ります(汗)」
皆それぞれ走りだした。

Dream Quest 本編44

「そういえば、さっき倒した奴なんか落としてましたけど、あれなんですか?」
「ん?なんか落としたの?何だろう…」
「あれです」
俺は落ちてる物を指さして言った。
サトコさんは落ちているカプセルのようなものを拾って、振ったり日にかざしたりして見ていた。
「これが何かはよくわからないけど、たぶん広場の店の交換クエスト用の素材だと思う…とりあえず拾って持っておきましょうか」
(クエストの交換品?武器もあるって言ってたよな…なんかカッコイイ武器が欲しいよな…あっ!そう言えばっ!)
「サトコさんっ、さっき蒼が何か大きな刃物みたいなもの持ってましたよね?あれって…」
「うん、やっぱり日本男児は刀よねっ!私も薙刀とか持とうかしら?」
(いえ、そんな感想を聞いてるんじゃなくて(汗))
「アレどこから出してきたのかなって…」
「う~ん、夢って基本的に、そこにある物には触れるし、乗り物なら乗れるし、食べ物には一応味もあるし、人なら会話も可能…でも、どれも物質そのものではないのよね、まぁ自分も同じ素材だともいえるんだけど…だから持って無かった物を、いきなり持ってるとか、持ってた物や居た場所が瞬時にガラっと変わってしまう事も夢の中では、割とごく普通の現象なのよね。だからいきなり武器を持っていても何の不思議でもないのよ?」
「なんか便利と言うか、やっぱり不思議ですけどね?」
現実ではあり得ないけど、人は普段の夢でそんな事があっても、こんな事はあり得ない!これは夢なのか?とかいちいち夢の中で考えたりしないでありのままを受け入れてしまうのよね…そっちのほうが、ある意味不思議だけどね(笑)」
「そっか…じゃあ俺も武器を出したりできるんですか?」
「人は起きてる時に考えてた事が、その日の夢になりやすい人とかもいるし、夢をコントロール出来るという人もいるんだから原理的には武器を出したり思った場所に移動したりなんてのも物凄く難しい事じゃないよ?でも急には無理だね…やっぱ訓練みたいな事しないとね。ガイドは人の脳が作りだす夢と夢世界の原理を応用して作られたものだから、特に訓練とかしなくても、夢の中で誰もが特に望まなくても知らずにやってのけてしまえる不思議程度なら意思で行えるようになっているわ。
でもガイドは基本的に何でもできる完全無敵な超強力万能ヒーロー!なんてのにはなってないけどね」
「えっ?そうなんですか?」
「そんなの連れて冒険しても面白くないでしょ?ゲームだったら最初の町を出たら
いきなりラスボスの前にワープして瞬時にラスボス倒して終わっちゃうわよ?」
「確かにそんな最強は嫌かも(汗)」
「それに、LVアップや経験値とかでステータス強化が出来なくても、人は体験で何かしらの成長はするでしょ?だからね…ガイドも人と共に成長するように、そしてその成長が目にも見えて一緒にいる事で、その成長が楽しみに思えるようにって成長システムが組み込まれているよ」
俺は蒼の方を見ていた。
(成長システム?)
「目に見える成長って?」
「まぁ、体験や経験と言う経験値を得る事で徐々に進化する!という感じかな」
「進化?外見が変わるとか?」
「それもあるかもね~ただ羽が生えるか、角が生えるか、機械化するか、大きくなるか、
強くなるか、特殊な能力に開眼するか、見た目は何も変わらないか、どうなるかは個体差があるので、どう変わるよとは言えないけど(笑)」
(あの耳の横から角が生えてるなんてのは想像したくないけど、羽とか生えたらかっこいいかもな…ロボ化はなんだかなぁ…特殊能力とかはいいよなぁ…)
俺は相変わらず蒼を見ていた。
その時、蒼がこちらを向いて言った。
「おい、なんか来るぞ?」
俺とサトコさんは蒼の見ている方を見ながら身構えた。

Dream Quest 本編43

ソイツは短い腕をブンブン振りまわして俺に向かってきたが、とりあえず俺は、その腕を避けソイツに詰め寄って飛んでいるハエでも落とすように腹に向かって、ビンタしてみた。
むにゅぅぅ…
手が腹に、めり込んでしまうかのような気持ち悪さに、俺は思わず手を引っ込めてバタバタとそいつから離れてしまった。
(あぅあぅ…アイツの腹に手を突っ込んでしまうかと思ったあいつの腹が割れたらどうなるんだ?スプラッターじゃないって言ってたけど何が起こるのか解らないのもキモイんですけど…俺って、ひょっとして真正のチキンだったのかな?)
腹が痛むのか、ソイツはうずくまっている。
しかし俺がソイツ(蚤)に気を取られている隙に姫様はお目覚めになっていて、俺に向かってムカデのように突進してきていた。
次の一瞬、映画で見る忍者のように俺の頭の上を高く跳び上がった蒼がソイツを蹴り、仰向けに転がったそいつの腹を何か大きな長い刃物のような物で斬った。
(えっ?なんで…蒼…武器…?)
ソイツは、斬られて動かなくなった瞬間、小さな粒子のようになって消えていった。
ソイツの消えた後には、小さなカプセルのようなものが転がっていた。
「タツヤーっ!ぼさっとするんじゃねぇー!」
蒼は、蚤の方へ走りながら怒鳴った。
(むぅ…そんなに怒鳴らなくてもいじゃねーかよ)
俺が蒼の方へ向き、蒼に気を取られている間に蚤の方は音も無く起き上がり自分の腹を叩いた張本人…すなわち俺に向かって攻撃しようとしていた。
「馬鹿…ほら!前っ!」
俺は直ぐに前を向いたが目の前に迫るソレを見た途端、情けない事に両手で頭を押さえ目をつぶってしゃがみこんでいた。
「ドゴン!」
鈍い音が聞こえた方を恐る恐る見てみたら、サトコさんが蚤の腹に思いっきり蹴りを入れてる姿が見えた。
ソレは吹っ飛び砂煙と共に仰向けに転がって殺虫剤を浴びた虫のように足をピクピクさせていた。
「あら、しくじったわ…」
サトコさんは、ソレを見ながら明るく?残念そうにつぶやいた。
俺は立ち上がって、ソレを見ていた。
(アレが消えてないって事はまだ生きてるんだよな?なんで蒼もサトコさんも、今のうちにトドメを刺さないんだろう?余裕…?というやつなんだろうか?)
蚤は、しばらくするとまた飛び起きた。
俺達は身構えたが、ソレは俺達の方を見もしないで大きくジャンプしながら、どこかへ飛んで行ってしまった。
「逃げちゃったね(笑)」
「ちっ、馬鹿め…」
ケラケラ笑ってるサトコさんと面白くなさそうな蒼と、そして何が何だかわけが分からなくて茫然としている俺と…
「倒さなくて…よかったんですか?」
俺は、誰にというわけでなく独り言のように尋ねていた。
「アレらには仕返ししなくてはとか仲間を連れて戻って来ようとか、そういう意思も感情も知能もないし、倒したからって経験値が入るわけでもないし、貴重なアイテムが手に入るとかもとりあえず無いから逃げられても問題は無いよ?」
「俺も倒してみたかったです…」
(なんか、自分が情けない…)
「まぁ、男の子ってそうかもねでも戦闘は蒼君に任せてタツヤ君は、避けたり逃げたりが完璧にできるようになればいいいいんだよ?あんなんでも実際に殺しちゃう感覚はあんまりいい物じゃないからね…今は作り物のモンスターが相手だからリアルなゲーム!で良いかも知れないけど、作り物のモンスターではないものが相手だと後味の悪い殺戮になる可能性もある…」
(サトコさんは、ここの生き物?というのを何体も殺してきたのかな…)
「それでも…」
「それでも、倒せるほど強くなりたいです」
「そうね、やられて目覚めが悪くなるより、やっちゃってすっきり目覚めたいしね、倒しに行こうか?」
サトコさんも、本体は男だからなのか自分のガイドの事件からなのか、俺が蚤ごときに恐れおののいてなんだか悔しくて情けない気持ちを察してくれたのかも知れない。
(サトコさん、ガイドが壊れるほどぶちのめされたわけなんだよな…そりゃ、目覚めも悪いだろうな…)
「あ…目覚めが悪いと言えば…あんな気持ち悪い虫ばっかりに襲われたら、殆どの人は悪夢なんじゃないでしょうか…?(汗)」
「えっ?カツオブシムシ?」
「いや、ここにいる虫全部ですけど…」
「う~ん、普段見慣れている虫は気持ち悪いとか怖いと思うかもだけど人って、見た事も無いものには恐怖心や嫌悪感なんて抱かないでしょう?」
「何処から見ても虫ってわかるだけで相当嫌だと思いますよ?」
「えっ?そうなの?たとえ虫でも人の過半数以上が害虫だと認めるものなら、恐怖を克服してでも退治しなくちゃと思うし?殺しても心は痛まないし?実は見た目より弱いし?男をあげるには丁度いいかもでしょ?」
「そうなんでしょうか…(あは)」
(学者肌というか博識ある人達ってたま~に普通だと考える感覚がズレまくってるって時あるよなぁ…)

Dream Quest 本編42

次の瞬間ソレは俺達を見下ろすようにその場に立ちあがった。
「でかっ!」
俺は茫然とソレを見上げていた。
「広い場所まで下がって」
「おい!後退するぞ」
俺は、サトコさんと蒼に腕を掴まれ後ろ向きに連行される犯人のような格好で開けた場所まで連れてこられた。
ソレも俺たちに、ついて移動してきた。
ソレは見た事無いようなグロテスクな虫のような姿をしていた。
「コレ、一体何なんですか…」
「それは、えーっと何て名前だったかなぁ…」
(名前なんてあるのか…やっぱ創作されたものなのかな…)
サトコさんはモノを考えるような無防備な姿でソレの前に立っていた。
ソレは、物凄い勢いでサトコさんに向かって襲いかかってきた。
「あ、危ないですよっ!」
俺は、2,3歩後ずさりをしながらソレを指を指して叫んだ。
ソレの口らしきものがサトコさんの顔の近くまで来た時サトコさんは自分の顔の横を遮るように手を持っていった。
ソレは見事にサトコさんの手に当たったが、まるでコンクリートの壁にでも当たったかのように弾かれその場で見事に転げてしまった。
「サトコさんって、ひょっとして…物凄く強い?」
俺は目を点にしてサトコさんを見ていた。
「えっ?アレが凄~く弱いだけよ?あっ、思いだした!ソレね…ヒメカツオブシムシっていうはずだわ!」
「姫っ?カツオブシムシ???」
(あれが姫なんて嫌過ぎだろ…っていうか、なんというネーミングなんだ…)
「知らない?洋服とかに穴を開ける害虫よ?」
「ええっ!知りませんよ、そんなのっ!!アレって実在する生き物だったんですか?(汗)それに普通はあんなに大きくは無いですよね!!?」
(あれが服を食うとタンスが空になりそうだぞ…?)
「実物大だと、虫めがねが必要になるわよ?そろそろ起き上ってくるよ注意して!」
俺はしゃべるのをやめてソレを見て身構えた。
(実物大では確かに戦うどころじゃないだろうが、せめて猫や犬ぐらいの大きさで良かったんじゃねーのかっ!?それに…何をどう注意すればいいんだろうか…?(汗))
ソレは、怒り狂ったかのようにブンブンと素早く頭部?を振りまわして来た。
ソレが俺の方に来た時、俺はとっさに後ろに飛んだ。
「ドガッ!」
見事に当たってしまった…
しかし、なんか丸めた布団でも、ぶつけられたかのように多少の衝撃や感覚はあったものの痛いとかは全く感じなかった。
それでも俺は思いっきり後ろに飛ぶなど普段やり慣れない事をしたのに加え飛んだ方向に加速が加わる衝撃を受けたのでまるで走り高跳びで背面跳びをしたかのように背中から着地してしまっていた。
「タツヤー!!」
「タツヤ君!?」
二人の叫ぶ声と掛け寄る姿が見えた。
「大丈夫?」
サトコさんが俺の手を取り引っ張り起こしてくれたが、ソレは動くのをやめてなどいなかった。ソレが後ろ向きのサトコさんに迫ってきた時俺は思わず叫んだ。
「危ない!」
俺が叫ぶより一瞬早く蒼はソレを見もせずにソレに向けて手だけを伸ばしていた。
ソレは、蒼の手に当たり見事に飛んで転げてしまった。
(今のは…何かしたのか?)
「そんなに強く叩いたら、中々起きて来なくなるじゃないっ!」
「知るかっ!丁度いい手加減なんかできるかっ!」
なんか、サトコさんは蒼に向かって文句?を言っているようだ。
「ほら、騒ぎを聞きつけて丁度いい奴が来たぞ」
「なるほど、丁度いいかもね」
(騒ぎを聞いて?助っ人でも来たんだろうか?)
次の瞬間、ガサガサと大きな音と共にソレは空高く飛んで俺達のすぐ目の前に着地した。
「何ですかっーー!!?これは!??」
(どう見ても助っ人じゃないしぃぃ)
「これは…ダニだったかしら?」
「ダニがあれほど飛ぶかよ!コイツは蚤だ!」
(名前が聞きたかったわけじゃないし、そんな解説もいらないよ…蒼…しかも、なんで2人とも、そんなに落ちついてるんだ!?2mm以上ある虫なんて普通に怪物だって…(汗))
「タツヤ君、どいつも攻撃力は屁みたいなものだから気を強く持ってれば何て事ないわ、ただ、とにかく当たらないように避けてね?まぁ、アレらは社が作った人造品なので別に攻撃して倒してしまってもいいけどね」
「攻撃って、アレに素手で攻撃するんですか…?」
「どれも背中は、かなり固いけど腹の方は弱くて脆いから!」
「アレの腹殴ったら黄色や緑の液体がドバーって出てきたりするのでは?(汗)」
「それは大丈夫よ、ここはホラーやスプラッター趣味用の狩り場じゃないからね!ほら来るよっ!」
(うわーこっち来たーー)

Dream Quest 本編41

ふと気が付くと、俺は見覚えのある部屋に立っていた。
そこに蒼が立っていて俺に気が付くといきなり話し始めた。
「タツヤ様、あなたは今眠りにつき、そして夢の世界へ来られました…でございます。
覚えていらっしゃるで、ございましょうか?」
(うわ~これも仕様というやつか?ガイドが可哀そうになるほど面倒臭い仕様だな(汗))
「ちゃんと覚えてるよ?行こうか」
そう言うと俺は昨日通った扉に向かった。
「ヤツヤ様、端末でお調べになる事はございませんでしょうか?
端末についてお忘れの場合は、説明させて頂きますでございますが」
「ないない、行くよ?」
俺は、とにかく早く行きたくて扉の方へ向かっていた。
次の一瞬俺は襟首を掴まれて思いっきり引っ張られた。
「何処へ行く?そっちは広場だぞ」
「えっ?そうなの?(汗)」
蒼は腕組をして聞いてきた。
「一応聞くが、昨日の場所で良いんだな?」
「そうだよ、サトシさ…(いや違うな)サトコさんも待ってるだろうから早く行こうよ?」
蒼は少し何かを考えてるようだったがチラっと俺を見て、扉の方へ向かって行った。
「えっ?そっちは広場にでるんだろ?」
次の一瞬、ぐわっと噛みつきそうな顔で振りかえって俺を睨んで言った。
「だから、紛らわしくて間違えそうなものは消しておくのがいいだろう!?」
「えっ?うん、そうだね…」
(そんな怒らなくてもいいじゃないかよ…)
蒼は、相変わらず魔法使いのように扉を消し別の壁に魔法使いのように扉を出した。
(あれはどういう原理なんだろうな?魔法…じゃないよな、たぶん…でもMPとか使ってんのかな?今度、サトコさんに聞いてみるかな)
「いくぞ」
俺達は扉の中に入った。
この扉はドアが開くわけではなく、そのまま通過する感じで、扉に入った瞬間真っ暗なエレベーターに乗ったような感じになる。
それも、ほんの一瞬で視界が明るくなると現地に到着という感じだ。
おれは辺りを見渡した。
360度地平線が見えるほどの広大な草原である。
「サトコさんまだ来てないのかな?」
(というよりこの広さで出会えるのか?)
蒼は、ただ遠くを眺めてる様にしか見えなかったが、直ぐにある方向を指さして言った。
「向こうにいる」
「えっ?どこ?見えないけど、ひょっとしてすごく目がいいのか?」
「広域スキャンしただけだが?」
「えええっ?そんな事もできるのかっ!?」
(見た目は人っぽくみえるけど、中身はロボコップみたいな感じなのか?なんか実は凄いんだな…)
俺は、蒼の事をマジマジと見惚れてしまった
サトコさんとはすぐに合流できた。
「サトコさん」
「おっ、来たね」
「じゃあ始めようか」
「えっ?何を?」
「モンスター退治かな?」
「おおっ!頑張ります」
「タツヤ君は、無理に戦闘に参加しなくてもいいからね」
「ええっ、俺も戦いますよ?」
「うん、戦闘には経験で慣れてもらうしかないんだけど、基本的には、人にはLVだの体力だのという数値があるわけではないので、倒す事が経験値になる、イコール強くなる!ではないんだよ。
タツヤ君には、避け方や逃げ方などそいういうのを身に付けてほしいかな」
「えっ?倒しちゃいけないんですか?」
(LVも経験値も無いの?なんかションボリだな…しかも避けたり逃げたりだけとか…なんで俺そんなチキンな役割なの?)
「倒してもいいけど、私達は魔物を倒す事が目的で夢の中にいるわけではないからね。
危険は回避しなければならないけど戦闘そのものは無い方がいいでしょ?」
「無益な殺生は避けろと?」
「まぁ、そういう事になるのかな」
(でも、倒してもいいんだよな!?)
俺達は、話しながら小走りで移動していた。
段々、草の背丈がまばらになり鬱蒼とした草原になっていった。
「背の高い草の中で移動してると音を聞きつけて向こうから寄ってくるけど、草の中では戦い難いので、開けた場所まで誘導するよ」
ゲームキャラを操作する!ではなく生身の自分(?)が実際に戦うという事に俺はとてもわくわくしていた。
(初心者用と言ってたけど、どんなやつなんだろうな?ねずみとかスライムとかそんななのかな…しかし遠目に見てたら草原なのに、その辺の雑草畑みたいなものではなく俺より背の高い草ばかりだ)
ガサガサという大きな音がして、大きく草が揺れた。
「来るよ」
「来たぞ」
サトコさんと蒼が同時に声を発した。

Dream Quest 本編40

俺は蒼とサトシさんに何度も交互に目をむけながら、ちょっと情けない顔になってソレを指さして聞いた。
「コレ、やっぱり壊れてません?」
「えっ?違う違う、壊れてるんじゃなくて、この機械の初起動チュートリアルでコレはコレの記憶も意思も無関係にこういう仕様になるんだよ(汗)」
「はぁ、なるほど…」
「お~ま~え~ら~俺様を指さしてコレコレ言うなぁーー!!」
蒼は、相変わらず上を向いて手をブンブンさせて怒鳴っていた。
(なるほどね、壊れては無さそうだ…)
その後、俺は何故蒼が石化しそうになっていたのかとか、お互いに何時ごろ寝るかとか
現実の連絡先の交換や、夢の中の補足説明のようなものとか、多少の話しの脱線もあったが、まるで良く知った友人と旅行の打ち合わせでもしてるかのように不思議と穏やかで
楽しく話をしたように思う。
途中で、食事をしてゆくか?と聞かれたが、それは一応遠慮しておいた。
彼の家を出た時には、すっかり夜になっていた。
(そういえば、凄く腹が減ったな…俺、今日何も食べてなかったような気が…なんか買って帰るかな)
俺はコンビニに寄って弁当とお茶を買って家路を急いだ。
「ただいま」
「おかえり、晩御飯は?」
「いらないよ」
「なぁに、新しいゲームでも買ってきたの?」
「えっ?何で?」
「そんな感じの嬉しそうな顔してるし、ゲーム買ったら、いつもご飯も食べずにやり始めてるじゃない(笑)」
「ああ、まぁそんなものかな!」
(俺って、分かりやすいワンパターンな行動してたんだな…(汗))
俺は、慌ただしく自分の部屋へ向かったそしてカバンから機器を取りだして机に置きガイドの機器を手に取って机に置いた。
一瞬スイッチを入れようかと思ったが、とりあえず何もせずにいた。
(まずは腹ごしらえだ…ひぇ~腹減った)
俺は、床に座りコンビニ弁当を食べながらガイドの機器に目をやり考えていた。
(この部屋で、蒼と会話すると家族に誰か居るのかとか、独り言を言ってるのかとか色々怪しまれないだろうかな?毎日誰かと電話してますというのも、なんか変だし、どのぐらい聞こえるものなんだろうな…)
俺は箸と弁当を置いてハイハイのような格好でドアの前まで行き、聞き耳を立ててみた。
(TVなのか会話なのか、どんな内容なのかもわからんけど一応、向こうの部屋で誰かが
ボソボソしゃべってるらしいのは聞こえるな…こうやって意識して聞けば聞こえる程度だから、大丈夫かな?う~ん、どうなんだろうな…外には聞こえないんだろうかな?
あそこの息子さん最近毎日夜に部屋でボソボソ独り言いってるって近所で有名にはなりたくないよな(汗)あああ~なんでメールとかチャットにしなかったんだよ…)
結局俺は、その夜はガイドを起動せずに装置を装備して眠りについたのだった。

Dream Quest 本編39

店主も名前を呼ばれて乗り出していた身体を瞬時に真っ直ぐに戻し照れ笑いを浮かべなががら言った。
「ここで、その名で呼ばれるのはとても複雑な気分になりますね…(苦笑)
紛らわしいとは思いますが、ここでは聡と呼んでもらえると有難いのですが」
「あっ!、す、すいませんっ」
俺は、きっとまだ顔が赤かっただろうけど、それに触れないでいてくれるのは有難かった。
しかし、そんな事より何より俺の頭は夢の事などとは別の事で混乱していた。
(ああ、そうだサトコさんだ…こっちが本体だってのは本当だったんだな…しかし、人の顔などドアップで見るものじゃないな…うわぁ、なんか心臓までドキドキしてやがる…ちょっと治まれよ…俺)
「あ、それから…さっき言おうとしたんだけど」
相変わらずサトシさんは、何事も無かったかのように俺に話しかけてくる。
(そういえば、何か言いかけてたっけ?)
「いきなり夢を思いださない方がいいよ」
「えっ?何か問題でも?」
「必ずしも楽しい夢を見ていたとは限らないからね?」
そう言いながら、サトシさんは麦茶の入ったコップを手渡してくれた。
「ああ、そうか…今度から気をつけます(汗)」
俺はそれを飲みながら、なんとか落ちつきを取り戻しつつあった。
「ん?その声はあの女だな?てめぇ~!」
俺がソレから目を離してお茶を飲んだと同時ぐらいに、その妖怪フィギュアもどきは大声で怒鳴った。
(な、なんだ?)
俺は噴き出しそうになったお茶を無理やり飲みこんでソレの方を見た。
ソレは下の方から上を向いて手をブンブンさせながらサトシさんに何か言おうとしているようだ。
「このやろ~てめぇぇ!死んだかと思ったじゃねーか!」
「勝手に殺さないでくださいよ?」
「うるせぇ!途方に暮れて石化しそうだったんだぞ」
「そんなに心配してくれたんですね?どうもすいません(笑)」
「心配なんかしてねぇぇーーーー!!」
(何の話をしてるんだろう?俺が寝た後に何かあったのかな?)
「蒼?」
俺は、とりあえず夢の事を思い出していたので普通に二人の会話に加わる気で名前を呼んでみたのだが
「これはこれはタツヤ様、先程のご用件は完了致してますでしょうか?では、次のご用件は?
1夢の解説 3夢の予習 4雑談 5体調 6その他 音声で番号をどうぞでございます」
おれは、またしても麦茶を思いっきり飲みこんでしまった…
(げっ!?なんだコレ…やっぱ壊れてないか?(汗))
一瞬石化したのはむしろ俺の方だったと思う。

Dream Quest 本編38

それを受け取った店主はスタスタと向こうへ行きPCやそれに繋がる機器類のスイッチを
ポンポンとテンポよく入れてゆき、俺の渡した機器とそれを繋ぎ独り言のように呟いていた。
「さてと、うまくいくといいんだけど」
俺は、手渡したままのポーズで固まりながらその様子を眺めていた。
(何してるんだろう?)
「ちょっとこっちに来てくれるかな?」
さっきの気まずい空気はなんだったんだと思うほど、何事も無かったかのように
店主は俺を呼んだ。
「えっ?はい」
俺はすぐさま駆け寄って店主が指さす方を見ていた。
(これは俺のガイドの…)
「これをつけてスイッチを入れてみてくれるかな?」
俺は言われるまま、さっき自分が手渡した物を、また受け取り自分の身に付けてスイッチを入れた。
本体を身に付けてガイドの機械のスイッチを入れると微かな音と共に白い光が出て、その中に人形のような人影が現れた。
「あれっ?布の塊じゃない!?」
(ひょっとして…この戦国萌え妖怪猫又フィギュアみたいな奴が俺のガイドなの?(汗))
俺は、その奇妙な妖怪?フィギュアをじっと見つめていた。
(こうやって見たら…等身大で見るほどキモいわけでもなく、意外とカッコイイんだな…
えっ?等身大で?これを見た???カッコイイって…!?)
「うん、壊れてないよ、ちゃんと起動してる」
店主は俺の隣に来て、同じように覗きこみながら小声で囁くように言った。
「話しかけてみて」
(えっ?コレに向かってだよな?人に見られていると恥ずかしいと言うかなんというか…)
「えっ?ええっと…ガイドさん?」
「その声はタツヤ様でございますね?本日は何の御用でございましょうか?
1夢の解説 2夢の復元 3夢の予習 4雑談 5体調 6その他 音声で番号をどうぞ」
「ええっ?」
「解説と復元と予習ってどういう違いが?(ヒソヒソ)」
「解説は、彼が夢のあらすじを話してくれる、復元は夢を思い出す、予習は次の予定みたいなものですね(ヒソヒソ)」
「じゃあ2で」
俺は何の躊躇も迷いも無く速攻で答えていた。
「かしこまりました」
「あっ!ちょっと待っ…」
店主が何か言おうとしたのと昨日の夢を思い出すのとはさほど違わなかった。
殆ど一緒にガイドを覗きこんでいた俺と店主は恐ろしい程近くに顔があり、次の一瞬お互い物凄い近距離で顔を向き合わせていた。
「思いだせた…かな?」
心配そうに見つめる店主の顔が夢の顔と重なり、俺は顔から火が噴き出したかと思うほど
真っ赤になりなから頷いた。
(お、思いだした…!!)
別に思いだしたのが恥ずかしいわけではなかったのだが、すぐ近くにある顔が一瞬サトコさんに見えたのだ。
「さ…さとこさん…?」
俺は、店主を指さして名前を呼んでいた。

Dream Quest 本編37

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「なんか、ものすごい量ですね」
「これでも足りないぐらいだよ」
俺には、それが何に使うのか、何に足りないのか、その核心部分がさっぱりわからずにいたが、仕事用なのかプライベート用なのか、なんとなく俺が突っ込んで聞いてはいけないような気がしていた。
「これを向こうに…」
「これは何処に?」
「それは、向こうから3つ目の…」
「そっちの線を、こっちに」
「これですか?」
「それと、その隣のもお願い」
俺達は、淡々と組立作業のような事を続け、それぞれの場所になんとか無事に、あれこれが設置されたであろう頃には、これぞ書斎だ!な部屋は、すっかり秘密基地のように怪しい機器で埋め尽くされていた。
「これでなんとか出来上がりかな…ごめんね、お茶すら出さずに…」
そういうと、店主は足早に部屋を出て行った。
部屋の片隅には、まだ設置されてない機器が中古の電気屋のように積まれたままだった。
(しかし、これ本当に何に使うんだろう?)
カチャカチャとガラスのコップの音を立てながら店主は戻ってきた。
そこには意外にも、ありふれたガラスのコップとペットボトルの麦茶が無造作に置かれた。
「好きなだけ飲んでいいからね」
「あ、はい」(えっ?ペットボトル???)
俺は少し間の抜けた表情をしていたかも知れない…
「???」
店主もどうしたのだろう?というような顔で俺を見ていた。
「いや…その何て言うか…イメージが…」
俺はこの店主の事を何か特別な人のように思っていて、恐ろしく高級そうなティーカップ
で厳選された一級品の茶葉のお茶を、いつも優雅に飲んでいるイメージ以外の想定が無かったのだ。
だから、この人がペットボトルのお茶などを飲むなんてのは、ローマ法王がコーラをラッパ飲みしてるのを目撃したってほどの驚きだったのだ。
店主は、一瞬クスっと笑って言った。
「私に多少お坊ちゃん的な所があるのは認めますが、それでも他は至って普通の男の子ですよ?」
「あ、はい、それが普通ですよね…すいません…」
(何言ってるんだろう…俺)
俺は昨日とは比べ物にならないほど親しげな店主に戸惑っていた。
(この差は覚えている者と覚えていない者の差なのだろうか?相手が覚えているらしい自分の記憶を自分だけが忘れて抜け落ちているって結構歯がゆいと言うのか、悶々としたものがあるよな…思いだせそうな気がしないってのもあるか…)
「渡した機器、持ってきてるよね?」
ふいに店主が真面目な顔で尋ねてきた。
今日話しをして、イカサマ品だったりしたら、つき返そうと思ってカバンに入れたのだった。
「えっ、はい、今朝棚にぶつけてしまったしガイドの機械、壊れているかと思ったので…」
(なんか、言い訳がましい事を言っている気がするけど…嘘じゃないぞ?)
「返そうと思ってた?」
そう言って笑う店主が一瞬酷く寂しそうな表情をしたように見えた。
「えっ?ええっ…と、その…」
(なんで、そういう核心に迫る事をズバッと聞いてくるかな…この人は…えっ?なんか似たような場面がどこかであったような?)
おれはカバンに手を突っこんだまま、ふと…何か思いだしそうな感じがしてそのまま固まっていた。
「それ出して渡してくれるかな?」
そう言って、すっと出された手を見ながら俺はカバンの中で機器を掴んだ手を、このまま出してすんなり渡してしまっていいのか正直迷っていた。
(えーい、考えてもわからん!とりあえずどうにでもなれぃ!)
俺は、持ってきた機器を無言で手渡した。

Dream Quest 本編36

「ああ…それは、たぶんガイドが眠ってたんだね」
「えっ?ガイドも寝るんですか?(汗)」
(ていうか、丸まって寝るのか…?)
「正確には眠ってるわけではなくて、ガイドの体験情報や記憶情報を整理して本部と情報の送受信をしてたり、自己修復を兼ねたメンテナンス中みたいな感じだね」
「なるほど…(メンテ中なのか(汗))」
「心配しなくても個人的な会話のやりとりや誰と何をしたかなどの個人的な情報は送られる事は無いし故意に覗き見もできないよ。ガイドが持つ情報には無い場所へ行ったり、今までに会った事無い生き物と遭遇したり、どのパターンにも当てはまらないようなイレギュラーな出来事に遭遇した場合などに新情報として送信されるだけだし、新しい情報があれば本部に集まる他のガイドからの新情報を受信するだけだね」
「え?心配はして無かったと言うか…心配しなくてはいけないのかどうか覚えてないんでなんとも…」
「まぁ、そうだよね…」
店主はそう言うと、うつむいて多少険しい顔をした。
「どうかしたんですか?」
「今まで向こう側…社の内部側からしか見て無かった事、見えてなかった部分が、こうしてタツヤ君と話していると別角度が見えてくる…考えてみると色々と危ういものだと再認識させられるものだなとね」
「何か危ういんですか?」
「とりあえず…相手が覚えて無ければ結構何でもやりたい放題なのだとかね(苦笑)」
「うわぁ…確かにそれは怖い…」
それを聞いて、俺も少し青くなり少し考え込んでしまった。
「あの…信用…してもいいんですよね?」
俺の中の多くの疑問?疑惑?不安?とにかく色々モヤモヤしたものがある中で、恐らく全てを含み全てを要約した言葉と問いかけになっていたような気がする…
「タツヤ君は今は覚えてないみたいだけど、私達は昨夜向こうの世界で会い、一応それなりの要点は話せたと思っているし信用というのとは違うかもだけど幾らかの理解は得られたと私は思っているよ?でも現時点で何も覚えてない人に昨日会って話したんだから信用しろというのはとても難しいよね…」
「やっぱり会ってるんですか!?でも…なんで、そんな重要な事、本人を目の前にしても思いだせないんだろう…」
俺は、すっかり忘れてしまっている自分が少し情けなくなっていた。
「タツヤ君が悪いわけではないよ」
店主は首を横に振りながら申し訳なさそうに言った。
(それでこの人は俺の事を名前で呼んでいるんだろうな…俺はこの人を何て呼んでたのだろうか…)
「そうだ!タツヤ君まだ時間は大丈夫かい?」
「あ、はい?」
「少し手伝ってもらえるかな?」
「えっ?別にいいですよ」
店主は立ち上がり俺に手招きをした。
「じゃあ付いて来て」
俺は後ろを付いていく事になった。
結構長い廊下の先には階段があった。
その間にドアらしきものは特になく恐らく壁の向こう側は店舗スペースだろう。
階段を上がると、また廊下が続いていた。
そこには幾つかのドアがあり、それぞれが個室のようだった。
(外からの見た目よりも中はかなり広いんだな…いくつ部屋があるんだ?(汗))
店主は1つのドアを開けて入った。
「ここで、このダンボールを開けるの手伝って欲しいんです」
そう言いながら、店主は既にスタスタと箱に向かい、バリバリとダンボールの箱を開け始めていた。
そこは、これが大きな家によくある書斎というものです!という見本のような部屋だった。
そこに、さっきの運送屋が運んで来たと思われるダンボールの箱が大量に積まれていた。
「お客様にいきなりこんな事をさせるのは、いささか気が引けるんだけど、ちょっと急ぎたくて、ごめんね…」
店主は黙々と作業をしながらも申し訳なさそうに言った。
「いえ、いきなり尋ねてきたのは俺なんで…」
俺は愛想笑いのような微妙な笑顔で答え、そこに中腰になって箱を開け始めた。
ふと、ダンボールに付いた送付票に目がとまった
(安部聡様宛…この人さとしっていうのか…さとし…何処かで聞いたような…
何か思いだせそうかも…?うん…至ってよくある名前だな…(汗))
どの箱にもコンピューター関連の機器らしきものがぎっしり詰まっていた。

Dream Quest 本編35

年代物のようなアンティークなソファとテーブルがあり重厚なカーテンと敷物が、昼間なのに夕方のような色調を醸し出している。
「少しそこに座って待っててくれるかな?」
「あ、はい」
店主はすぐに部屋を出て行った。
俺は、ソファに座り何となく落ち付いていた。
疑ってた事とか勝手な妄想とか既にどうでも良くなってて、なんか本日のミッションコンプリート!な感じの気分だった。
「では、これで失礼します!」
「はい、どうも御苦労さま」
玄関先で挨拶が交わされて、運送屋は帰ったようだ。
「ごめんね、お待たせ」
ドアを開けて身体を斜めに傾けている姿が何故だか可愛らしい女の子のように見えてしまって、俺は一瞬、自分の目を疑い顔が熱くなりそうになったが何とか平静を保つ事が出来た。
そもそも、なんか意気込んで家を飛び出して、何も考えずここまで来て、そして実際に会えたものの何を話せばいいのかなんて、内容は全然まとまってなどいなかったのだ。
店主は俺の向かい側に座って優しく微笑んで俺に尋ねた。

「話しがあるんだよね?」
(うっ…何を言おうと思ってたんだ?製品がインチキかどうか確かめる?いや、いきなりそんなストレートな話しじゃなくて…とにかく、何か言わないと…)
「あのっ…例の機械、昨夜試したはずなんですが、俺覚えてないし何が何だかわからなくなって…」
「全覚えてない?思いだす感じも無い?」
「はい…さっぱり…」
「う~ん。覚えたまま目覚める設定にも出来無くは無いのだけど…あれはね…自分の脳の記憶整理がたまたま見せるような普段寝てる時に見てた夢とは少し違って、ある意味、新たな体験や記憶として認識してしまう事も多いんだよ。
そうなると現実の自分が現実の記憶を持ち、なお且つ夢世界の自分の記憶の両方を同時に持った状態になるわけで、まぁ、人は会社に居る時の自分、家に居る時の自分、一人の時の自分など【別の場所で微妙に違うそれぞれの自分の記憶】を正しく整理して使いわけられる生き物ではあるけど現実の記憶と非現実の記憶は、慣れないと記憶の混同や混乱が起きて大変危険だと言われているんだ。
夢だけに限定された話では無く、想像や空想や妄想に思い込み、ゲームやTV、映画、本など…非現実なものの影響を受け過ぎて、それらを実際の記憶だと誤認識してしまうだけで、現実に悪影響を及ぼす場合もあるからね。
だからなるべく、普段の夢のように自然に目が覚めたら覚えてない!になるように設定されているんだよ」
(相変わらず難しい話だな…ゲームやアニメが規制された理由と似たような感じだろうか?でも、夢から悪影響ってのは聞いた事無いけどなぁ…)
「ああ夢か~ってわかれば特に問題無いように思えるんですが?」
「他愛のない夢だったらね…でも、記憶にいつまでも残るような強烈な夢だったら、現実に支障をきたす要因にもなり得るからね…他にも色々あるしね」
おそらく店主の頭の中には俺に言っても理解不能な色々なあれやこれやが沢山あるのだろうと思う。
「あの…もう思いだせないんでしょうか?」
「大丈夫だよ。覚えてないと言っても記憶から消去されたわけではなくて、重要度の順位が低いから思いだし難いだけで、何かの拍子に思い出す事もあるし、装置付けてガイドと話せば思いだせるはずだよ。蒼君とは、まだ話してないんだね?」
「蒼…君って?」
「タツヤ君のガイドさん!」
そういうと、店主は組んだ指をあごの下に当てながら今までとは少し違った笑顔でニッコリ笑って俺を見つめた。
(ガイドはちゃんといたのか!?この話からすると、この人とも会ってるんだろうな…?じゃあ、やっぱりあの布を丸めた生き物?がガイド?(汗))
俺は見つめられて、ちょっと恥ずかしい気分になったが、それよりも、ガイドとやらが、どう思い出してもさっき見た布団子の事しか思い浮かばなかった。
「ガイドって…あの布団子虫みたいな奴ですか?」
「布団子虫????」
店主の方は、布団子の方がよくわからないようだった。
「ひょっとして、あのガイド機器が壊れてるんでしょうか?それとも俺の使い方が間違ってたのかな…あ、装置をつけて無かったからとか?」
店主は、しばらく片手をあごに当てて考えていたが何かわかったように切りだした。

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